■Casio Model 121−U Casio Model 121−Uは、Model 101のデザインを 踏襲した12桁電卓である。ただし、Casioのロゴは新ロゴに変更されて おり、「0」の表示がCasioの特徴であった下付きの「0」では無く通常 の表示になる等、より現代の電卓に近づいた製品となっている。単二乾電池4 本もしくはACアダプタによる2電源駆動が可能であった。電池を内蔵しない 場合には本体はかなり軽く、持ち運びにも便利になっている。 全体のデザインは、Model 101シリーズと共通しているが、厚みが 若干薄くなっているのが特徴的だ。また、コストダウンのためキーの材質が軽 くなってしまい、押した感じが101シリーズと全く異なり、安っぽくなって いる。機能的には、ルート演算機能は内蔵されていないものの、通常の四則演 算を行う上では十分なものになっている。本体上面には、Σキー、Kキー、小 数点位置指定レバー(0,1,2,3,4,6)が搭載されている。キーは磁 石リレー方式では無く、通常の接点タイプになっており、クリック音は無い。
12桁のニキシー管による表示部分は、個別に設けられた12本の7セグタ イプの蛍光表示管と、記号表示専用の1本の蛍光表示管の、合計13本から構 成されている。発光色はブルーで、視認性は良い。 電池室の蓋には2117977と記載されたシールが、また電池室内部には 00017215と記載されたシールが貼られている。消費電力は1.5W。 ACアダプターの型番はAD−4160となっている。製造年月日を示す記載 がどこにも無いので、正確な製造年は不明であるが、√121−Eが1973 年の製造で、消費電力が5.4Wであったことから考えると、それよりは後の 製品であることが予想される。おそらくは74〜75年頃の製造であろう。 なお、本体の大きさは21.5cm×17cm×5cmとなっている。 ケースは2本のネジで固定されており、それまで使用されていた4本から削 減されている。こういったところにも、コストダウンの後が見受けられる。
内部構造は比較的簡単で、LSI1個とプラスチックDIPのIC4個、そ れにメタルキャンIC1個で構成されている。メインとなるLSIはNEC製 μPD284Cであり、表示制御も含めてほぼワンチップ化されたものとなっ ている。パッケージは42PinのプラスチックDIPで、K49186の捺 印がある。4個のDIP−ICは、東芝製TM4352Pで、おそらく蛍光表 示管ドライブ回路を構成していると思われる。パッケージは16Pinのプラ スチックDIPとなっている。このICの横に、古風なメタルキャンのICが 1個搭載されている。東芝製T3086Dという10PinのICで、詳 しい用途は不明である。 この他に、2SC945が2個、日立製のパワートランジスタ2SC116 2が1個使用されている。基板はKYOEI製のベークライト基板で、√12 1−Eと比べると、明らかにコストダウンが図られている。基板上には、17 215という捺印が残っていた。12+1本の蛍光表示管は、基板に直接ハン ダ付けされており、メタルフレームで固定されている。 電源部分には、FUJI電気製のDC−DCコンバータ、MCT0631が 使用されている。電源は単二乾電池4本もしくはACアダプタ入力であり、A Cアダプタ入力の際には、このコンバータでレギュレーションしたものと思わ れる。 メイン基板とキーボード部分とはコネクタで接続されているが、キーボード 側ではリード線を直接ハンダ付けするといった手間が見受けられる。
Model 121−Uは、消費電力の削減により乾電池駆動が可能となり AC電源コードから開放された機種であった。電池は単二乾電池を4本も使っ ていたが、コードレスになったメリットは大きかったものと思われる。 なお、1972年(昭和47年)8月には、6桁ながら完全乾電池駆動の名 機「カシオミニ」が12,800円という衝撃の価格で発売されている。カシ オミニは単三乾電池5本で駆動しており、乾電池駆動の電卓は一般に普及しつ つあった。