■Casio Model 101−L カシオのモデル101−L電子卓上計算機は、101−Aとほぼ同じ機能を持 ちつつ、部品点数の削減と表示デバイスの改良を施すことでコストダウンを図 った製品である。前モデルである101−Aでは、表示デバイスとして古典的 なニキシー管が使用されていたが、101−Lではオレンジ色のFIP表示を 採用している。FIP表示部は10桁が1個のモジュールに集積されており、 従来製品と比較すると非常にコンパクトである。因みに、1971年製造の AS−8Aでは、表示デバイスとして1桁ごとにガラス管に封入された7セグ メント方式の、後期タイプニキシー管が採用されている。以上を見てもわかる ように、当時の電卓では表示デバイスの革新が目覚しかったことが伺われる。 本モデルが発売された正確な時期は不明であるが、基板上のシルク印刷には 1972年の文字があった。またケース裏面には、「48 6 4」のペイン トがあり、これは昭和48年(1973年)6月4日を示しているものと思わ れる。以上より、ここに掲載したモデル101−Lは、1972年代に設計さ れ1973年6月製造、出荷されたものと思っても、そう大きなズレは無いで あろう。本体の大きさは、幅18cm、奥行き20.5cm、高さ6cmとな っている。電源はAC100Vのみ。
101−Lの外観は101−Aとほぼ同じ形をしており、キーの材質等も変わ りが無く後継機種であることは明らかである。前面の傾斜したパネルにメーカ ーロゴと製品型番が記載されているところも、101−Aと同じである。全体 としては正方形に近いプロポーションであるが、これがAS−8シリーズにな ると表示桁数が8桁に減少するため、細長いプロポーションとなる。 本体裏面の銘版に刻印されたシリアル番号はB627177、Q番号はQ11 2050となっていた。もちろん、カシオの会社ロゴは旧デザインである。
内部構造は集積化が進んでおり、見た目にもかなり単純である。基板にはベー クライトを用いてコスト削減を図っている。メインとなるロジックICは日立 製28ピンLSIのHD3536。使用デバイスのパッケージもセラミックか らプラスチックに変更され、この部分でもコストダウンがなされている。この 他、大型の部品としては、FIPをドライブするIC6225くらいだ。因み にIC6225は2個使用されている。 101−Lに使用されている主だった使用部品は下記の通り。 ・HD3536(28PinプラスチックDIP) ・HD3535(24PinプラスチックDIP) ・IC6225×2個(FIPドライバIC) ・HD3127P(16PinプラスチックDIP) ・HD3233P(16PinプラスチックDIP) 基板上にはKYOEIの文字と1972年のシルク印刷があり、基板設計は 1972年に行われたことがわかる。LSIの他に目に付く部品は緑色をした 0.022μFのコンデンサの列である。ノイズ除去のためかどうかは不明だ が、他のモデルと比較して非常にコンデンサの数が多い。 その他、2SC371、2SC926A、2SA495等のトランジスタも見 受けられた。抵抗アレーも使用されており、部品点数の削減に役立っている。 コストダウンが図られた基板であるため、基板を見ていると白物家電のそれと ほとんど変わらない感じを受ける。それにしても、セラミックパッケージがあ るわけでもないし、基板もガラエポでは無くベークライトになってしまってい るため、基板の見栄えとしては迫力に欠ける。まあ、電卓の内部を開けて見る というようなことは、普通の人ならばしないけどねぇ。
表示部分は前述したように10桁のFIP表示で、色は初期FL表示管に良く 見られるオレンジである。フォントは、「0」の表示に7セグメントの下半分 しか使わない、いわゆる下付きの「0」である以外、現在のものとほぼ同じ。 しかし、色がオレンジというだけで随分とレトロな雰囲気が出るものである。 キー部分のメカは、カシオのヴィンテージ電卓に共通した磁力によるリレース イッチを採用しており、信頼性は高い。 この101−Lはかなり大量に製造されたようで、今でも比較的良くオークシ ョンに出てくるようだ。卓上型としては中くらいの大きさがあり、日常使うの には若干大きい感じもするが、重厚なキータッチといい見やすい表示といい、 十分実用になる。デザインも70年代当時のスペースエイジを感じさせるグッ ドデザインで、量産性を重視した現代の製品には得られない雰囲気がある。 日常に使用するマシンとしてお勧めの一台であると言えよう。