「ローマ帝国の崩壊・文明が終わるということ」 表紙。

■ローマ帝国の崩壊・文明が終わるということ (2014/08/10)

 文明が終わるということに異常な興味を持つ筆者は、新聞の書評を読んで迷わず本書を購入、一気読みしてしまった。

 ところで筆者は、古代ローマ史の専門家でも何でもない。一応、ギボン著「ローマ帝国衰亡史」くらいは読んでいる(但し、もう30年近く前のことだ)。そんなワケで、ローマ帝国は蛮族、すなわちゲルマン民族の侵入により蹂躙され崩壊したということは常識だと理解していた。しかし近年、これとは考え方を異にした見解が出ているそうなのだ。曰く、ローマ帝国に侵入してきた蛮族は、「ローマ世界に平和的に順応し、その結果ローマは新しく洗練された世界に変容したのだ」というものだ。

 で、本書はこのような新見解を真っ向から否定するために、あらゆる物的証拠を駆使して書かれた史学書・考古学書である。

 ローマ帝国は洗練された生産・流通システムを構築していた。これにより、広い地域で良質な物品が提供されるようになった。しかし、蛮族の侵入以降、混乱により崩壊し、地域的には先史時代の文化水準まで後退してしまった。。。。という「事実」が、豊富な考古学的調査結果を基に論じられる。

 本書の最後の文は、現代社会への警笛だ。

 崩壊以前のローマ人たちは、今日の私たちと同様、彼らの世界が、実質的には変わりなく永遠に続くであろうと疑いもしなかった。彼らは間違っていた。彼らの独善を繰り返さないよう、私たちは賢明でありたいものである。

 著者のブライアン・ウォード=パーキンズは、イギリスの考古学・歴史学研究者。本書は難しそうに思えるかも知れないが、論旨が明確でわかりやすく、また翻訳のレベルが非常に高いため、難無く読める良書である。さすが価格相応のことはある(本体3,300円)。

 筆者的に面白かった点は、本書PP84-85で述べられている事柄であった。ゲルマン民族の侵入に際し、最も成功した抵抗活動を行った地域は、実はローマ帝国の中でも最もローマ化されていなかった場所だったということである。ローマ帝国の洗練と専門分化は、機能している限りは素晴らしいものだった。しかし、その専門分化したシステム故に、一旦混乱が起こると専門性の高い者たちが不在となり、結果として技術と組織が再建出来なくなってしまう。すなわち、ちょっとばかり「遅れている」地域の方が、今まで自分達で何とかやってきた分、破壊と混乱といった外乱に強いということなのである。

 これは、現代社会でも言えることだ。特に大きな企業なんか、そのものじゃないだろうか?うまく回っている時には問題無い。しかし、一旦負の連鎖が始まると、空洞化した技術は崩壊へと導くばかりになる。

 ところで、本書を読んだ後、再度ギボンの「ローマ帝国衰亡史」を読んでみたくなった。確か、押し入れの中に岩波文庫が創刊60年を記念して特別復刊した全集が、箱入りで保存してあったハズだ。苦労の末発掘してきたのだが、昔の文庫本なので活字が小さくとても読めない。良くこんな細かい文字を読んでいたものだ。老眼には歯が立たないよ。参ったなぁ・・・

 なおこの全集は、昭和63年(1988年)04月02日、神保町の冨山房書店で購入している。購入後26年、四半世紀以上経過している。価格は全10巻で5,700円だった。なぜこのような細かいことを覚えているかというと、何のこたぁ無い、箱の内側に購入時のレシートが貼付されていたのだよ。

 ( ゜∀゜)<アハハハハハ八八ノヽノヽ



「ローマ帝国の崩壊・文明が終わるということ」 裏表紙。

ギボン著「ローマ帝国衰亡史」全集。
1988年、岩波文庫が創刊60年を記念して特別復刊したもの。



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