Casioのポケット関数電卓で、筆者のお気に入りの二点。左が1975年製造のfx-101、右側が1974年製造のfx-10。

■Casioの関数電卓 (2014/03/14)

 初期の電卓を収集し、それをWEB上に掲載することは、当初本ホームページの目標の一つであり、筆者の老後の楽しみであり、かつ盆栽趣味になるハズであった。ところが、かんじんのコンテンツである「計算機博物館」は、デスクトップタイプの大型電卓をメインに紹介している途中で息切れを起こし、その後例によって飽きてしまったので、更新がパッタリ止まっている。

 本来ならば、ポケットタイプの電卓も取り上げなければならない。特に筆者の所には、CommodoreとCasioの初期ポケット電卓が、ほぼフルコンプで揃っている。しかし、なにぶん数が多すぎ、いざ作業に入ると気が狂いそうな感じがするので、健康のため敢えて近付かないことにしている。

 そのようなワケで、本来はメインページである「計算機博物館」に掲載するべき内容を、このページで紹介する。本家のページは、いつになったら完成するか、見当も付かないからね。

 と書いてはみたものの、Casioのfx-10やfx-101のようなメジャーな機種は、紹介ページがそれこそゴマンと有るので、今更書いたところで大したインパクトは無い。知ってるヒトは皆、知っている有名機種なのだ。

 fx-10は、筆者の中でも特にお気に入りの関数電卓だ。Casioには、関数電卓一号機として、fx-1というマボロシの製品がある。fx-1はデスクトップタイプの電卓で、「関数電卓」という商品ジャンルを生みだした最初の製品だ。16個の関数機能を内蔵していたのだが、重量2.3kg、当時の販売価格が325,000円と、一般の技術者にとってはとても手にすることができない高級品であった。なお、fx-1は現在となっては激レア機種である。筆者も色々と探してきたが、このfx-1だけはコレクションできていない。

 おっと、fx-10のハナシだった。fx-1が余りにも高価で大きかったこともあり、よりパーソナルユースの関数電卓が必要となってきた。そこで出てきたのが、技術者個人でも持つことが可能なfx-10である。fx-1が発売されたのが、昭和47年(1972年)のことだったが、fx-10はその2年後の昭和49年(1974年)に発売されている。内蔵関数の数が16個から10個に減ったとはいえ、価格は24,800円と激安になり、パーソナルユースにも充分対応できる商品となった。かように、電卓開発における半導体の進歩というものは、凄まじいモノが有ったのである。

 fx-101は、昭和50年(1975年)の発売で、fx-10と比べると関数機能が大幅に強化されている。関数ボタンは18個に増え、表示桁数も10桁に増加した。三角関数の逆関数も、キー一つで表示できるようになった。外観も、キーの形状や全体のデザインが、fx-10よりもモダンになっている。fx-10でパーソナル市場に普及した関数電卓は、たった1年間でこれだけの進歩を遂げたのだった。

 ・・・といったお約束の前置きは、もう止めておく。改めて解説するまでも無いコトだからね。では、なぜこの二機種をわざわざ取り上げたのかと言うと、筆者が所有する関数電卓でも、特にお気に入りのモノだから。とりわけfx-10は憎めない奴だよ。まず、外観が野暮ったい。大らかでもある。10個並んだ関数キーも、今様の関数電卓のようにキッツキツに並んでおらず、スカスカのレイアウトだ。しかも関数キーがデカイ!「オレは関数計算ができるんだぞ!」という強い自己主張を感じる。配色もレトロで良い。白と赤と、そしてねぼけたネズミ色のキーが並んでいるのを見ると、自然と愛着が湧く。

 で、こ機種にはもう一つ、特徴がある。関数計算をさせると、考え込んだ揚げ句に結果を表示するのだ。fx-10の場合、関数計算を開始すると、8桁ある蛍光表示管の全桁に数秒間ランダムに数字が表示され、ようやく結果が出ているのだ。なんか、こういう動作を見ると、いかにも「仕事してます!」っていうか「考えてます!」って感じがして、癒やされる。ボタンを押すと瞬時に結果が出るのことに慣れてしまっているからねぇ。こういった所に、fx-10の妙な人間臭さを感じる筆者は、未だにこの電卓を手放せないのだ。

 一方、fx-10の1年後に発売されたfx-101も似たような動作をするのだが、Casioとしても、さすがに表示桁全てにランダムな数字を出すのはいかがなものかと考えたようで、関数計算中は1桁目にだけ数字が出力されるようになっている。とはいっても、一瞬考えてから結果を表示する動作には変わりなく、この電卓もfx-10同様、人間臭い動きをする。

 この一瞬考える動作は、案外動画で紹介されていないので、今回その模様を撮影してみた。この電卓を使って開発設計現場で実際に使っていた人にとっては、懐かしいのではないだろうか?


fx-101(左)とfx-10(右)の側面。fx-10の方が筐体が厚い。長年に渡る使用で、双方とも相応にヤレてますな。。。

fx-101(下)とfx-10(上)のバッテリー格納状態。fx-10は、単三乾電池4本を、全て同一方向に入れる。この形式は、初代Casio miniシリーズにも共通している。一方、fx-101は4本を直列に入れる一般的な配置になっている。そんなことより、たかが電卓に単三乾電池を4本も使うというところに、時代を感じる。

fx-10の裏側に貼付された銘板。消費電力は0.45Wとある。

fx-101の銘板は、プラスチック成型された刻印タイプ。消費電力はfx-10と同様、0.45W。

関数電卓ではCasioのfx-10とfx-101がお気に入りであるが、一般の四則演算電卓のお気に入りといえば、何と言ってもTI社の傑作、TI-2500シリーズに尽きる。一番左側に置いたTI-2500 Datamath IIは1974年頃の製品。今でも問題無く動作する。というか、筆者は今でもカンタンな計算を行う時に「実用で」使っている。このTI-2500については、話しだすとキリが無いので止めておく。なお、詳細は「計算機博物館」のTI-2500 IIの項目をご参照くだたい。


筆者宅の書架に保存されていた「カシオ35年史(創造、貢献の歴史)」P122に掲載されている、Casio fxシリーズの項目。この社史は、平成6年にカシオ計算機株式会社社史編纂室が作成した非売品である。
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Casio fx-10の「考え込む」関数計算動作。
しかし、本体が斜めっちゃってるし、最近仕事が粗くなったなぁ。。。 (動画)



こちらは、Casio fx-101の「考え込む」関数計算動作。 (動画)


本文とはあまり関係無いが、この画像は2000年の暮れに、21世紀を迎えるにあたって制作されたものだ。筆者お気に入りのTI-2500シリーズと、なぜか岡本太郎画伯の太陽の塔のミニチュアを配し、背景には、3dfxのロゴを入れた。若干の解説を。

先ず、電卓としてTI-2500では無くTI-2510を置いてあることに気が付いた方。マニアですなぁ。そう、狙った演出です。ただ単にTI-2500を置いたのでは、ヒネりが無いからね。

岡本太郎画伯の太陽の塔は、知人が川崎にある岡本太郎美術館で購入してきたグッズ。

そして、この画像の中でおそらく最も貴重なモノは、背景に使った3dfxのパネルなのである。このパネル、Voodooシリーズでお馴染みの3dfx社の日本法人事務所に実際に使用されていたものだ。同社は2000年の終わりに、業績不振を理由に業務を停止したが、日本法人事務所も、その時に廃止された。筆者も3dfx日本法人の社長さんと一度お会いしたことがあるが、それはそれはマニアックな方で、話しが弾んだのなんのって。今度合宿して一晩語り明かしましょうと約束までしていた矢先の撤退だった。
2000年末、同社日本法人の事務所で、忘年会を兼ねた解散会が催され、筆者の知人のデバイスエンジニアが出席した。もうこれで、3dfxは無くなるという、お通夜のような雰囲気のパーティーを予想していたそうだが、実際はまるで逆だったとのこと。出席者全員がヤクでも打っているのかと思えるほどのハイテンションになっていて、同社日本法人の解散を「祝って」いたと言うのだ。これをもって、破れかぶれと言う。
パーティーの最後に、お決まりのビンゴ大会が始まった。景品はそこそこ用意されていたというのだが、事務所を片づけなければならないということで、ナント!急遽会社の看板まで出品されたのだ。筆者の知人は見事、この看板を引き当てた。しかし、持って帰るとカミさんがうるさい。よって、当時アンティークショップを営んでいた筆者の所へ持ってきたという来歴を持つ。

筆者は自分の店舗を畳むまで、この3dfx社正式の看板を飾っていた。3dfx関連は、この看板の他にもTシャツが数枚残っている。いずれも日本法人の社長さんから頂いたもので、そのうち1枚を着潰して、残りは保存している。
3dfx社は、見事なまでの技術者集団だった。あれだけ技術に詳しい社長さんは、今までにお会いしたことが無い。それだけに、西暦2000年の撤退は悔やまれたものだ。

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WEB上に落ちていたTI社の電卓、TI-2510の取扱い説明書
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