Kodak M532のパッケージと本体。

■Kodak M532 easyshare (2014/03/09)

 さて、ここで漸くKodakのデジカメ、M532という製品の話しになる。

 実はこの製品、かなり前(正確に言うと、2012年03月)に入手していたものだ。それを今更取り上げるのは、深遠な理由があってのことだと思うだろうが、そのようなことは一切ない。ただ、書きたくなったから取り上げたまでのことだ。

 Kodak M532 easyshareというデジカメを知ったのは、以前にも取り上げたことがある株式会社安原製作所ホームページ内のコンテンツ、「カメラ随想」の第一回を読んだからだ。当然、それまでは、Kodakがこのようなユニークな製品を出しているとは知らなかった。詳細はプロのカメラ職人が書かれた「カメラ随想」第一回をお読み頂きたい。このカメラがなぜスゴイのかということを、実に的確かつ端的に述べられており、参考になる。

 なお、余談であるが、「カメラ随想」では「闇に隠れて生きる 日立デジカメ」のシリーズが猛烈に面白い。地獄三兄弟だとか、気違い兄弟、偽者兄弟等、ユニークな製品が続々登場し、これがあの日立が発売していたデジカメなのかと、目を疑うこと必至である。

 閑話休題。そのようなワケでさっそくM532を購入したのだが、知名度ゼロに近いカメラだけあって、価格はAmazonでは売価1万円を切っていたように覚えている。残念ながら、在庫が尽きたみたいで、今現在Amazonで見つけることはできない。Kodak M532は、コダックが発売した最後のデジカメであり、コダックのデジカメ事業における「白鳥の歌」となった。日本では、家電量販店のワゴンサービスで発売されていたようであるが、筆者は実際店頭で販売しているところを見たことが無い。

 このデジカメ、トイ・カメラと言ってしまうとそれまでなのだが、そこはKodak、世にも恐ろしいマニアックな機能が内蔵されているのだ。その前に、カンタンなスペックを記しておく。


Kodak M532本体。とてもコンパクトだ。

項 目 内 容
イメージセンサー   1/2型 CCD 撮像素子
有効画素数 1450万画素(4412×3282ピクセル)
記録画素数 14MP(4:3)モードで、4288×3216ピクセル)
記録メディア SD、SDHC(32GBまで動作確認)
撮影レンズ 光学4倍ズームレンズ(35mm換算 28〜110mm)
手振れ補正 静止画動画でのデジタル手振れ補正機能
デジタルズーム 5倍
液晶表示画面 2.7型、23万画素
動画撮影機能 HD(16:9) 1280 × 720(30fps)
VGA(4:3) 640 × 480(30fps)
フィルム効果 コダカラー、コダクローム、エクタクローム
T-MAX、トライ-X、セピア
電源 リチウムイオン充電式バッテリー「KLIC-7006」
外寸 93 x 55 x 19 mm(電源オフ時・最厚部)
重量 117g

 ざっとこのような仕様になっているのだが、一番の特徴は「フィルム効果」モードの搭載であろう。撮影した画像を、往年のフィルムを用いた時と同じような感じにするため、特種なファームウエア処理を行うことができるモードなのだ。

 「そんなん、撮影後にフォトショで加工すればいいじゃん!」なんて、野暮なことはお言いでないよ!フィルム効果モードの名称を見れば、銀塩写真をやってきたヒトには堪らない魅力を感じるハズだ。

そう、他社には絶対真似できない機能なのだ!

 そりゃそうだ。コダカラー、コダクローム、エクタクローム、T-MAX、トライ-X。どれもフィルムメーカーとしてのコダックが商標を持っている。銀塩写真に凝っていたヒトであれば、こうした名称を聞いただけで、どのような画像になるのか、容易に思い浮かべることができるだろう。そして、実際に各モードで撮影してみると、「いかにもそれっぽい」仕上がりになるという、これはもうカメラマニアからすると感涙モノの機能なのだ。

 エクタクロームモードの発色の素晴らしさは、他のメーカーでは味わえない、あのコダック・ブルーを完全に再現する。そのこってりとした暖色系の色合いは、目に優しい。コダクロームモードは、なかなか芸が細かい。各フィルム効果モードでは、フィルムの粒状感も演出しているのだが、特にコダクロームでは粒状感が顕著に現れる。まるで紙焼きした画像のようになるのだ。

 コダカラーモードは、ちょっと意外感がある。色が褪せすぎなのだ。これは演出過剰とも言えるが、それはそれで良い。昔撮影した写真が、押しいれの中から出てきたような雰囲気とでも言おうか。

 これだけのフィルム効果モードを搭載できるのは、コダックという会社がフィルムメーカーとして長年技術を蓄積してきたからに他ならない。デジカメでは非常に個性的な製品を出していたコダックであったが、日本では全く受けなかった。筆者のような好き者が、DC4800のような、実に味わいのある絵作りをするデジカメを重宝して使っていたくらいである。DC4800が発売された頃、即ち2000年に、このようなフィルム効果モードを搭載していれば、あるいはその後の流れが変わったかもしれない。だって、こんな機能、他のメーカーでは逆立ちしたって出来ないのだから・・・

 なお、M532をトイ・カメラと称したが、それはあくまで価格面から見てのことで、実際の性能はオモチャとは一線を画する。何よりレンズが良い。画素数も多い。手振れ補正などの基本的な機能は有しているし、動画もHDで撮影可能だ。重量もバッテリー込みでたった117gしか無い。ただ、若干動作が遅いところがある。最大解像度で静止画をパシャパシャ撮影していると、SDカード書き込みが間に合わなくなり、時々待たされる。これは、使用しているSDカードの書き込み速度がタコなのが原因かも知れないので、カメラ本体に問題があるとは言いきれない。

 機動性と持ち運び易さを重視し、長年CanonのIXYシリーズを使ってきた筆者であるが、最近はKodak M532を使用することも多い。IXYは良く撮れるのだが、絵があまりにも優等生的で、面白みが無いのである。IXYの絵は、記録としては優れているのだが、作品として見た場合には、余りにも冷たい。Kodak M532のような遊び心のあるデジカメに浸るのも、なかなか良いものだ。

 デジカメは価格じゃないな。レンズと、画像処理エンジンのファームだよ。




これが、Kodak M532に内蔵されているフィルム効果モードのメニューである。モードは全部で6つあり、カラー系はこの3種類。コダカラー、エクタクローム、コダクロームとなっている。

M532に内蔵されているフィルム効果モードのメニュー、その2である。モノクロ系も3種類のモードが選べる。T-Max、Tri-X、セピアだ。



エクタクロームモードで撮影。
拡大(4288×3216ピクセル)

コダクロームモードで撮影。
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コダカラーモードで撮影。
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エクタクロームモードで撮影。
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コダクロームモードで撮影。
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コダカラーモードで撮影。
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エクタクロームモードで撮影。
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コダクロームモードで撮影。
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コダカラーモードで撮影。
拡大(4288×3216ピクセル)



エクタクロームモードで撮影。
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コダクロームモードで撮影。
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コダカラーモードで撮影。
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エクタクロームモードで撮影。
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コダクロームモードで撮影。
拡大(4288×3216ピクセル)

コダカラーモードで撮影。
拡大(4288×3216ピクセル)



エクタクロームモードで撮影。
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コダクロームモードで撮影。
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コダカラーモードで撮影。
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TMaxモードで撮影。フィルムモードでは、TMaxモードを「光沢の色合いで極微粒子状」と表現している。
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トライXモードで撮影。
余談だが、トライXと聞くと、どうしても「究極超人あ〜る」第8巻に掲載された「これが基本だ」の回を思い出してしまう。なんのことか判らないヒトには全く面白くも何ともないハナシである。「トライXで万全」という台詞なんだけどさ。
トライXという名称であるが、「Tri(試す)」ではなく、3倍を意味する接頭語「tri-」を示している。当時、ISO 100のフィルムがダブルX(XX)と呼ばれていたのに対し、感度をISO 200に上げたことを示すため、コダックが「トリプルX(XXX)」を意味する「トライX」という名称を付けた。フィルムモードでの説明には、トライXモードを「劇的で粒子状」と表示している。
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