今回の分解ターゲットである第3世代iPod。型番はA1040。容量20GB。すでに裏蓋を外した状態。

■第3世代iPod 其の一【分解】 (2013/07/08)

 それでは、さっそく第3世代iPodを分解してみることにしよう!

 ・・・って、また唐突に来たな。

 説明しよう!

 コレクション目的で購入しておいた第3世代iPod、型番A1040の調子が悪くなった。暫く使っていなかったのが原因かもしれない。液晶のエラー表示を見る限り、お約束のHDDの故障のようである。よって、開腹手術を行い、HDDを交換することになった。とはいっても、この機種に使用されている「Apple」ロゴ入りの1.8 インチ 5mm 厚のHDDは、入手が困難だ。HDDの方は気長に探すとして、とりあえず中身がどうなっているのか、調べてみたというワケである。

 じゃあ、第2世代は調査しないのか?と問われれば、第2世代は外観からして第1世代とほとんど同じであり、またPCとの接続もIEEE1394(Fire Wire)のみと変わっていないので、せいぜい違いといえばHDDの容量程度であろうと推測したので、やらない。やっても、あまり新しい発見は無さそうだもんね。

 iPodも第3世代になると、結構薄くて部品密度も上がっており、分解には苦労する。裏蓋の開け方は、基本的に第1世代と同じであるが、嵌合部分がキツいため、より慎重な作業が必要となる。裏蓋と本体の接合部に、精密ドライバーを挿入してこじ開けるのは、キズが付くのでお薦めできない。ちょっと遠回りになるが、接合部に薄くて堅いカード、例えばテレカだとかその類いのものを押しこんで、内部のツメを地道に外すのが良い。

 一番最初にカードを挿入する時は、なるべく薄いカードを選ぼう。パウチしてある会員証なんかが良い。それでも、結構キツく閉まっているため、なかなかはさめない。そこは気長にやること。クソ暑い日曜日の午後、見るに足るようなレンタルDVDも無く、ヒマでヒマでしょうがないような時に、修業の意味を込めて行うのが良い。20分も悪戦苦闘していると、最初の一枚が挿入できるハズだ。そうしたら、後はラクチン。入れたカードに重ねるようにして、2枚、3枚と挿入し、隙間をひろげて行くのだ。ある程度広がったら、カードをグイと差し込むと、内部のツメがハズれる。これを根気良く繰り返して行けば良い。

 ツメが全部外れたら、蓋をガバっと開けたくなるところであるが、ちょっと待った!。この世代は、裏蓋と本体との間が、フレキケーブルを介して嵌合コネクタにより接続されているのだ。理由は、裏蓋側にイヤホン端子が付いているためだ。よって、裏蓋を少し持ちあげて、嵌合コネクタをゆっくりと押しあげるようにして取り外しておく。これでようやく、裏蓋を分離することが出来る。

 内部構造は、第1世代と余り大きな変化は無い。相変わらずHDD、基板のサンドイッチ構造であるが、バッテリーは基板の一部に移動し、第1世代のような3段重ねにはなっていない。その分、本体が薄くなっているんだね。一方、この世代からホイール部の操作がタッチ式になったため、専用の制御基板が追加されている。

 さすがに第3世代になったのであるから、メインプロセッサ(SOC)は変更されているだろうと予想していたのだが、案に反して初代と同じ PortalPlayer社製 PP5002が用いられていた。但しチップのバージョンが「B」から「D」とアップし、製造年月も2001年34週から2004年16週になっていた。

 IEEE 1394 PHY and Link-Layer には、初代機と同様、TI社製 TSB43AA82が搭載されている。また、この世代のiPodは、Fire Wire 接続に加え、USB 接続も可能になった。

 内蔵メモリには、SAMSUNG社製K4S561633C-RL75 が用いられている。これは16M×16bitのSDRAMだ。このデバイスだけ、チップ表面がアルミホイルのように輝いている。理由は不明。放熱のためかな?

 USBコントローラーチップには、CYPRESS社製 CY7C68013が使用されている。製造は2004年21週。操作部のホイールがタッチパネルになったことに伴い、タッチパッドコントローラとしてSynaptics社T1004Bが搭載されている。この石は、PS/2およびRS-232C I/Fを介して、システムコントロール用のプロセッサと接続可能だ。タッチパッドコントロール基板は、本体基板とは別に設けられており、バッテリーを持ちあげると見ることができる。本体基板とタッチパッド制御基板とは、フレキケーブルで接続されている。

 主だったチップの中で、一点不明な製品があった。TI社製 43F4KCK CN211というものだ。形状からして、バスドライバか何かだろうと思うのだが、調査しても不明である。

 以上見てきたように、第3世代になっても、基本的な構成は初代と余り変わっていない。HDDのような駆動部があるパーツを使用している限り、ある程度の故障率は致し方ない。HDDをフラッシュに置き換えるメリットは、計り知れないものがある。


アジの開き状態にした、第3世代iPod。HDDを保護するゴムクッションの採用など、細かい所に改善が見られる。一見バッテリーのように見える銀色の板は、単なるHDDの放熱板。バッテリーは本体基板の一部を削って配置されている。

基本的な内部構造は初代と余り変わらない。基板とHDDとが、相変わらずのサンドイッチ状態で格納されている。上述した通り、バッテリーの格納位置が変わったくらいだ。そのため、初代機と比較して薄く仕上がっている。

PCとのI/Fコネクタ部分。このモデルから、Fire Wire 6ピン・メスコネクタでは無く、普通の30ピン・ドック・コネクタが採用されている。

そのドック・コネクタ部分のアップ。右側にある白いコネクタは、バッテリとの接続用。バッテリーは基板の下に格納されている。

本体と裏蓋とを接続している嵌合コネクタ。裏蓋側にイヤホンジャックが搭載されているため、本体と接続する必要があった。分解する際には、裏蓋を開ける前に、このコネクタを外しておかないと、かなり不幸な結果になる。

裏蓋側のコネクタ。フレキケーブルには「FOXCONN」の文字が印刷されている。2004年製造であることが判る。

東芝製1.8インチ5mm厚のHDD、MK2004GAL。モチロン、Appleロゴ入り。コイツが壊れていた。ストレージとしてHDDを使う限り、故障からは逃れられない。

内部基板 #1。バッテリーを搭載した状態。
拡大

内部基板 #2。バッテリーを持ちあげた状態。バッテリーの下に配置されているホイール制御用基板が見える。
拡大

タッチパッドホイール制御用基板。コントローラには、Synaptics社製 T1004Bが使用されている。
拡大

メインプロセッサ(SOC)のPortalPlayer社製 PP5002D-L。第3世代になっても、メインプロセッサは変わっていなかった。
拡大

1394 PHY and Link-Layer コントローラチップとして搭載されている、TI社製TSB43AA82。初代機と同じ石が載っている。
拡大

SDRAMとして搭載されている、SAMSUNG社製K4S561633C-RL75。なぜかチップ表面が銀色に輝いている。これも謎だ。
拡大

タッチパッドコントローラとして搭載されている、Synaptics社製T1004B。タッチパッド制御基板は、本体基板とは別に用意されている。2枚の基板は、フレキケーブルで接続される。
拡大

USBコントローラーチップとして使用されているCYPRESS社製 CY7C68013。Fire Wire I/F に加え USB にも対応させるため、USB コントローラチップを追加している。
拡大

使用部品中、唯一素生が判らなかったもの。TI社製 43F4KCK。単なるバスドライバだとは思うんだけどね。
拡大

<< Menu Page



Copyright (C) Studio Pooh & Catty
1996-2013