「テレビゲームとデジタル科学」展会場の、「ENIAC」展示ブースにあったパネル。「世界最初の『汎用』コンピュータ(The World's First General-Purpose Electronic Computer)」の表記が見える。サインはENIACの開発者の一人、バークス教授のもの。


■ENIAC (2010/11/22)

 古いスパコンのハナシをしたついでに、最初期の電子式コンピュータ「ENIAC」にも触れておこう。詳細はここに掲載されているが、ENIACは理系人間にとっては余りにも有名なマシンである。余談だが、まだヤフオクが始まったばかりの頃、当然本人認証なんかしていない時代、オクには詐欺まがいや冗談半分の出品物が多数掲載されていた。その中に、こともあろうに「エニアク売ります」という出品があった!確か説明文に「冷蔵庫くらいの大きさです」とか何とか書いてあったが、モチロン釣りである。

 さて、ここに掲載したENIACの写真は、2004/07/17-10/11の期間開催された「テレビゲームとデジタル科学展」に展示されたものだ。この展示会は、ENIAC以外にもレトロなPC、初期の周辺機器、ゲーム機が多数出展されており、極めて面白い内容だった。ENIAC展示ブースでは、真空管フリップフロップ10回路で構成された、10進リングカウンタモジュールの実物が展示されていた。もちろん、実物を見るのは初めてである。ENIAC内部は10進処理だったので、このリングカウンタモジュール10個で1語=10桁分のアキュムレータを構成していた。

 筆者はENIACが大好きである。今となっては、「世界最初のコンピュータ」とは言えなくなってしまったが、それでも大好きだ。因みに、歴史家が認定している世界最初のコンピュータは、「アタナソフ&ベリー・コンピュータ」ということになっており、ENIACは「世界最初の『汎用』コンピュータ(The World's First General-Purpose Electronic Computer)」という表現になっている。

 ところで、17468本の真空管、70000個の抵抗器、10000個のコンデンサ等で構成されていた。幅24m、高さ2.5m、奥行き0.9m、総重量30トンという、ものすごいスペックであったENIACも、現代の技術では1チップ化されてしまっている。ここには、ENIACの機能を取り込んだ1チップLSI「ENIAC-on-a-CHIP」についての詳細が掲載されているので、ご参考に。。。。

10進リングカウンタ内部の配線
モジュールは、ユニットを縦にし、真空管側を内側に向けて設置されていた。画面右端には、稼働状態を示すランプが付いており、モジュール内の不良を目視することが可能だった。しかし、この丁寧なハンダ付けは、職人の香りがして良いもんだねぇ。。。
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10進リングカウンタ内部の配線
さらにアップで撮影。キャラメルのような形をした茶色い素子はコンデンサ。「CORNELL-なんちゃら」というメーカー名がかろうじて判読できる。
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10進リングカウンタ内部の配線
配線部分のアップ。この写真では、モジュールの稼働状態を表示するランプが、上辺に並んで配置されているのが判る。
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10進リングカウンタ全景
真空管フリップフロップ10回路で構成された、10進リングカウンタモジュールの全景。人の背丈よりも高い。配置は縦。このリングカウンタモジュール10個で1語=10桁分のアキュムレータを構成していた。モジュール構成となっており、ユニット両端にはバスに接続するためのコネクタが配置されている。稼働状態表示ランプは10個+1個配置されており、おそらく10桁分+キャリーの表示用だったのだろう。詳細は不明。
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ミシガン大学に寄贈されたENIAC真空管とプレート
ENIACの一部を保存してもらう際、ミシガン大学に寄贈されたENIAC使用の真空管とプレート。真空管の表面には、ENIACの開発者の一人であるバークス教授のサインが入っている。
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10進リングカウンタに用いられている真空管
RCA、Westinghouseといったメーカ名が見える。全てGT管であり、特に双三極管である6SN7が多用されていた。
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モジュール両端に設けられたコネクタ部分
この細長い10進リングカウンタモジュールをバックボーンに接続するためのコネクタ部分。12本の端子と、2本のピンから成っている。
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10進リングカウンタの側面
SILVANIAの真空管が見える。
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ENIAC操作解説図の一部
パネル展示されていた、ENIACの操作解説書。ENIACには多数のスイッチがあり、これらをプログラムごとに設定しなくてはならなかった。これだけスイッチが並ぶと、もうワヤクチャ状態である。メカフェチには堪らないねぇ・・・
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ENIACの回路図の一部
パネル展示されていた回路図の一部。上部は「MODIFIED ACCUMURATOE DECADE PLUG-IN UNIT」、下部は「MODIFIED ACCUMLATOR & CLEAR PLUG-IN UNIT」と記載されている。
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DECADE PLUG-IN UNITの回路図アップ(1/3)
左端に、バックボーン接続用コネクタ端子の用途が記載されている。
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DECADE PLUG-IN UNITの回路図アップ(2/3)
真空管は、6SN7の他にも6V6、6L6、6SA7等が使用されている。
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DECADE PLUG-IN UNITの回路図アップ(3/3)
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ACCUMLATOR & CLEAR PLUG-IN UNITの回路図アップ(1/3)
左端に、バックボーン接続用コネクタ端子の用途が記載されている。
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ACCUMLATOR & CLEAR PLUG-IN UNITの回路図アップ(2/3)
真空管は、6SN7の他にも6V6、6L6、6SA7等が使用されている。
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ACCUMLATOR & CLEAR PLUG-IN UNITの回路図アップ(3/3)
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ENIAC展示ブースのパネル
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エニアック本の決定版はコレ!パーソナルメディア出版の「エニアック」。設計・開発から特許紛争に至るまで、詳細にレポートされている良書。オレなんか3回は読んだね。

現代のLSI技術を用いて、ENIACをワンチップLSI化してしまった「ENIAC-on-a-CHIP」。7.44mm x 5.29mmのサイズ、174,569のトランジスタ、0.5 μm CMOSプロセスを用いて実現している。
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おまけ。ENIACに付いていた銘板。下記に高解像度のJPEGをアップしたので、フォトシール用紙に印刷してお気に入りのマシンに貼りまくろう!
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