これが謎のHDDカード。メーカーはPC/AT互換機用増設メモリカードなどで有名だったPlus製。ISAバスに突き刺すフルサイズの拡張カードなのであるが、その構成の変態性という点ではダントツである。このようなレアなグッズをリアルタイムに使っていたヒトって、一体何人くらいいるのだろうか?妙に気になる。
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■退廃的互換機趣味(其之三十三) (2010/02/27)
 【謎のHDDカード!】

 あ〜はいはい、また「謎」ですか。。。って声が聞こえますね。ああ、そうですよ、謎ですよ。何でもかんでも「謎」って付けりゃ良いというワケじゃないことくらい、ちゃんと認識してますよ。でも「謎」は「謎」ですから・・・あ〜はいはい、じゃ、本編始めますよ〜。

 今回取り上げる周辺機器は、かなりの「謎」でもあり、またかなり「変態的」でもある。退廃的互換機趣味第三十三回目にして、漸く真の意味で「謎」と呼ばれるにふさわしいグッズの登場だ。Plus社がかつて製造していた「Plus Hardcard II」は、ISAバスに搭載するフルサイズのHDD拡張ボードで、これを用いることで、HDDが内蔵されて無いPCに、40MBもしくは80MBのHDDをカンタンに増設できる、という便利グッズである。

 で、何が謎か、どこが変態的かというと、まず第一に、このカードでHDDを使用するためには、起動用(ブート用)のFDが必要だということ。第二に、このカードに搭載されているHDDは、一般的な3.5インチのものでは無く、「特殊形状」であることだ。特に二番目は意外にスゴいことだ。一般的な3.5インチHDDを使えば、そりゃ汎用品だからコストを抑えることができる。普通、そう発想するものだ。壊れた時でもカンタンに取り替えられるからね。でもこの製品には、同じ3.5インチHDDでも特殊な形状をしたHDDを搭載している。良く考えると、なんだかとんでもない世界なのだ。

 このPlus Hardcard IIであるが、筆者がとあるジャンク屋で、未使用在庫のジャンク品としてマニュアル・ドライバ一式込みを格安にて入手したそうなのだが、なぜか筆者の海馬にはそのことがそっくり欠落しており、全く覚えていない。なので、今回PS/55の中に入っているのを発見して、驚いたの何の・・・

Plus Hardcard IIの制御基板面。デバイスの捺印から、1989年後半〜1990年前半にかけての製品であることが判る。マニュアルには1989年の記載有り。今から21年前の製品である。一応使用可能。一応と書いたのは、スピンドルが若干固着気味であるからだ。制御マイコンとして、NECの78K3シリーズ、μPD78312Aが使われているのが、個人的にはすごく懐かしかったりして・・・(実はNECのこのシリーズのマイコンについては、筆者は良く知っている、というか知りすぎているんだよね。。。)
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Plus Hardcard IIの表面。って〜か、どっちが表なんだか判らないんだけどね。。。向かって右側がハードディスク本体部分。こうしてISAバス拡張カードにHDDを載っけてしまうという発想もすごいが、このHDDが汎用品の3.5インチでは無く、この製品特注の「特殊形状HDD」であるところが驚愕。通常のIDE HDDよりも、細長いアルミダイキャスト筐体を採用しているし、I/F部分の構成も全く異なっている。HDDに貼付されている銘板には、「Made in Japan」の文字が・・・
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Plus Hardcard IIのHDDは、一見汎用の3.5インチHDDのように見えるので、わざわざこうして比較をしてみた。厚さは一般的な3.5インチと同じ25mm。但し形状が全く異なり、汎用品よりも細長いアルミダイキャストに納められている。この製品のためだけに作られたHDDなのだ。当然、I/F部分のコネクタも、通常のIDE HDDと全く異なっている。

IBM PS/55 TYPE5510-Zの中に搭載した、Plus Hardcard II。ご覧の通りフルサイズの拡張カードである。このカード自体にBIOSを搭載してはいるが、カードそのものにはブート機能が無く、付属のドライバと使って、FDDより起動させる必要がある。
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 このPlus Hardcard IIは、おそらく1990年の製品だ。発売されたのは1989年であろう。今から20年以上経過しているため、おそらくはHDDが固着し、動作しないと思われた。案の定、最初に電源を投入した際には、HDDのスピンドルが回転しない。仕方なく、最終手段を用いる。カードを両手に持ち、HDDを中心にして、水平方向に右回り・左回りにと激しく回転させるのだ。これを2〜3回思いっきり実行した後、電源を投入すると、HDDは奇跡的にも20年振りにイヤイヤ起動を開始した。

 さて、HDDカードの使用方法であるが、上述したようにカード自体にブート機能が無いため、FDDに起動用FDを入れた状態で行う。このFDは、適当なOS、例えばDOS J5.00/Vのシステムフォーマットしたものに、「config.sys」ファイルを作成し、その中で一行だけ

 device=a:\atdoshc2.sys

 なる呪文を記載し、同時にFDの中に、製品に添付されてくる上記ドライバを格納しておけば良い。このドライバを組み込んだ時点で、Hardcard IIのHDDはCドライブとしてDOSから認識される。残りのDOS/V化に必要なファイルは、Hardcard IIのHDDに格納しておき、起動FDからそれを参照するよう記述する。ドライバに相当するこの呪文で、Hardcard IIのHDDはOSから認識されるので、FD起動と言っても、思ったほど時間がかからない。

 今回復活に成功したHardcard IIのHDDには、DOS J5.00/Vがインストールされ、各種開発環境やユーティリティーが格納されていた。以前にも話したが、本体であるPS/55 TYPE 5510は、一時期、柴隠上人 稀瑠冥閭守 (Kerberos)氏が使用しており、このマシン上でJEdit(謎ぱ〜機等のCGA環境で動作する日本語エディタ)の開発を行っていた。まあ、良くこんな変態的な環境で開発していたものだと感心。

 Hardcard IIに使用されているHDDは、おそらくIDEであり、40MBと80MBの二種類があった。この容量の小ささからも、時代を感じさせる。制御ボード上のジャンパピン設定により、カードの物理デバイス番号を0番もしくは1番に設定できる。これは、既にHDDが搭載されたマシンに、二番目の拡張用として本製品を使用する便宜を考えてのことであろう。因みに割り込みは11番もしくは12番を使用する。

 HDD部分のスペックだが、80MB品の場合、64kBのバッファメモリを搭載しており、平均アクセス時間は19msとなっている。劣化のため動作音はうるさいし、実際12MHzの80286で使用してみると、呆れるほど鈍い。しかし、たとえ80MBと言えども、HDDを内蔵するメリットは計り知れないものがあったのだ。

システム起動時のメッセージ。最初の行に、Plus Hardcard IIのデバイスドライバが組み込まれたことを示す記述がある。以降はOSがHDDをCドライブとして認識できる状態となるため、OS関連のドライバ類はHDDの中に格納し、起動時の高速化を図ることが可能である。
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Plus Hardcard IIのルートディレクトリを表示させたところ。起動FDによりブートさせるため、HDDには「config.sys」や「autoexec.bat」等の起動時に用いるファイルが全く無い。しかし、DOS関連のファイルは、HDD内部の「DOS」ディレクトリに格納している。
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「chkdsk」コマンドを実行させたところ。結果が出るまでにカラカラと軽快な音がして、かなり時間がかかるのはご愛敬。まあ、今から20年以上も前のHDDだもの。本製品は80MBタイプである。
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起動用FDの「config.sys」の構成を、ファイラーソフト「FD」で見たところ。一番最初に、本製品をDOSで認識させるためのドライバ「atdoshc2.sys」を組み込んでいる。この一行で本製品がCドライブとして認識されるので、後のドライバはCドライブに格納して構わない。
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さて、こうやって起動したPS/55 TYPE5510の実力を示すべく、ベンチマークテストを実施してみた。これはかの有名な「3DBENCH」の結果。「4.7」である!はぁ〜〜〜。脱力系だね、正に。これほど低い値、現在のPCではかえって出すことが困難だ。因みに、このテストを実行させたところ、気が遠くなるほどの時間がかかったことを申し添えておこう・・・
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Landmark Speed Test Ver 2.00を走らせてみた。マシンそのものは12MHzの80286 CPUを搭載しているが、実力的には15MHzのIBM PC/ATに匹敵すると出た。元祖IBM PC/ATよりは若干高速化されているってことだね。それにしても、ビデオの性能の低いことと言ったら・・・
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DOS版の各種ベンチマークテストの結果である。遅いとはいっても286マシン、初代PC98の7.25倍の処理スピードを誇っている!しかし、PC9801DA2(80386/20MHz)と比較すると、CPUの非力さが如実に出て0.55倍と半分程度の実力しか無い。まあ、386と比較しちゃ仕方ないね。これを見ても判るように、80386って画期的なCPUだったんだねぇ。。。
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奇跡的に残っていたHardcard IIのマニュアル表紙。1989年の発行だから、2010年の現時点において21年前のものである。マニュアル類は非常に充実しており、セッティング方法も微にいり際を穿って書かれている。当時としては相当高級品だったことの証であろう。

製品に同梱されていたカタログ。ここでは、前バージョンのHard Cardについて記載されている。Hard Card IIは40MBと80MBの二種類であったが、前バージョンでは20MBと40MBになっていた。アクセス時間も28msと遅い。
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Plus社は、当時こんな製品も作っていた。リムーバブル・ハードディスクである。コイツは元祖IBM The PCやPC/XTでも使用可能というツワモノであったらしい。
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動画1.Plus社製Hardcard IIを使用して、PS/55 TYPE5510を起動させたところ。おっと、一番最初にエラーが出てますな。長い間使用していなかったため、CMOSの内容が飛んでしまったようだ。一般的な互換機のマザーボードであれば、「DEL」キー等を押し下げながら電源を入れるとBIOS設定画面に入れるのだが、IBM純正マシンは、これまた純正のリファレンスディスケットを使用しないと、CMOSの設定ができない。。。これについては、後ほどまた取り上げることにしよう。なお、システムの起動時間が非常に長く感じられるが、これは実時間である。Hardcard IIを使用しても、これだけの時間がかかったのだ。
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