IBM製造の純正機、PS/55 TYPE 5510-Z02のカバーを取り外したところ。上部の細長いブロックは電源ユニット。このモデルはFDDを2基搭載したものなので、HDDは格納されていない。マザーボードは当然専用で、いわゆるBaby ATと呼ばれるフォームファクタでは無い。
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■退廃的互換機趣味(其之三十二) (2010/02/21)
 【PS/55 TYPE 5510 解剖編】

 このシリーズのマンネリ化も甚だしく、つい最近も柴隠上人 稀瑠冥閭守 (Kerberos)氏より「オマエの退廃的互換機シリーズは、とっくに先が読めてるんだよ!」と皮肉を言われた。まあ、これ以上凝れない内容だからして、当然と言えば当然である。しかも、今の時代に生きるヒトが見ても役に立つ情報は皆無で、これこそ時間の無駄だ。それでも敢えてこのシリーズを続けるのは、シニア廃人としての意地でしか無い・・・

 前回の予告通り、今回はIBM純正のPC/AT互換機、PS55 TYEP5510の解剖編である。とはいっても、蓋外して中見ただけなんだけどね。まあ、今風のマシンとは全く様相が異なっているのは当然として、当時一般的だったBaby ATのマシンとも全然構成が異なる、IBM設計の独自仕様のマザーボードを搭載している。AT互換機の証であるISAバスは、マザーボードからライザーカードを用いて水平に設けており、スロット数は3つしか無い。しかし、このマザーボード上には、必要となるシリパラI/O、ビデオが全て搭載されているから、スロット数の少なさについてはさほど問題とはならないであろう。

 以下に主だったチップを掲載しておく。286時代の古いマシンなので、チップの集約化はさほどなされておらず、部品点数は非常に多い。チップの型番を解析すると、ボード構成の概要がぼんやりと判ってくる。

・N80286-12 286CPU(intel純正12MHz:PLCC)
・C80287XL コプロセッサ(intel純正)
・WD76C10LP-LR システムコントローラ(Western Digital製)
・WD76C20-JU FDC(Western Digital製)
・WD76C30-JU シリパラI/O、クロックジェネレータ
・WD90C10-LR VGAチップ(Western Digital製)
・iP8042AH キーボードコントローラ(intel製)
・IMSG176P 6bit-DAC(ビデオI/Fパレット:inmos製)
・IBM 79F2661 不明(おそらくHDC?:IBM製)

 どのデバイスも1990年後半週の製造である。機能ごとに分かれているため、多数のデバイスを使用しているが、主としてWestern Digital社製品で固めているのが判る。因みにオンボードメモリチップはIBM純正が搭載され、その他増設用として30PinのSIMMソケットが4基搭載されている。当初、このソケットにはメモリが入っていなかったが、押入に残っていた適当なヤツを搭載し認識させた。

マザーボードを俯瞰する。ボード中央にある縦長コネクタは、ISAバススロットのライザーカード挿入用である。古い時代のマザーボードにしては珍しく、CMOS保持用バッテリは一般的なCR2032で、すぐに交換可能。筐体内部には、1991年4月3日のスタンプ捺印があった。。
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80286-12MHz CPUと80287コプロセッサ。コプロはオプションの後付けである。修正ジャンパー線の跡が生々しい。コプロはセラミックパッケージ&金蓋で、今となっては貴重なモノ。
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オンボードのメインメモリと30Pin SIMMのオプションメモリ。製品購入時は、SIMMソケットにメモリは入っていなかった。オンボードメモリはIBM純正である。画面右側にはWD製システムコントローラチップ、WD76C10が、また左側にはキーボードコントローラのi8042が見える。
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画面下のチップは、シリパラI/O、クロックジェネレータ用のWD76C30。画面上部にはVGAチップのWD90C10とVRAM、DAC等が見える。カラフルなフラットケーブルは、謎のFDD接続用ケーブル。なぜ謎なのかは、後述する。
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 ボード上には、ジャンパ配線が飛び交っている。たかが80286搭載のマザーなのに、である。後でこれだけ手作業配線するだけでも、かなりのコストアップになったであろう。非常に奇妙なのは、FDDとHDDのボード側コネクタのピン数だ。通常、互換機であれば、FDDは34Pin、HDD(IDE)なら40Pinのフラットケーブルを使用する。しかしなぜかこのボードは、FDDとして40Pin、HDD用として44Pinのコネクタが搭載されているのだ。

 本モデルはFDDのみのタイプである。まさかFDドライブまで特殊仕様じゃないだろうなと確認してみると、ドライブ側は一般的な34Pinだ。特殊仕様はケーブルにあった。どういう理由だか判らないが、ボードに接続する側のフラットケーブルのヘッダ部分は、6Pinが未使用として浮いているのでる。おそらく、HDDに接続するケーブルにも、同じような仕掛けが施されているのであろう。この部分は細かい所であるが、若干不可解だ。とても気になる。こんなこと気にしてどーする!と言われても、気になる。。。

 因みに、本マシンの発売当時の価格は、5510-Z02のベーシックモデルで、198,000円であった。IBM純正製品としては、破格の安さだったのである。HDD搭載モデルは40MBのIDEを積んでいたが、発売当時の価格は不明。きっと高かったんでしょうなぁ。。。さて次回はいよいよ、謎の拡張カードについて取り上げよう。このカードの変態性は、パネェんだよな、、、震えて待て!!!

システムコントロールチップ周辺のジャンパ配線。実に細かい作業が施されている。
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ISAバスを3スロット搭載したライザーカード。これを見ると、本マシンがPC/AT互換機であるということを実感できるというものだ。
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ライザーカードを搭載した模様。ISA拡張ボードはフルサイズで3枚搭載可能。
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謎のFDD接続ケーブル。なぜかボード側ヘッダ部分のピン数が40Pinになっている。ケーブル自体は一般的な34Pinなので、6Pin分使っていないのが判る(コネクタ向かって右側部分)。なんでかな?ワケワカラン。。。ひょっとしたら、3モード対応のドライブを使用する際の信号用として確保していたのかもしれないが、にしてもIDE HDDのピン数も多いのは変だよなぁ。。。やはり無理がある想定だ。

FDCであるWD76C20のデータシートを見ていたら、本マシンの構成と非常に良く似たブロック図が掲載されていた。異なる点はビデオのDACくらいである。WD製チップで固めると、大体こういった構成になるという、いわばお手本のようなモノであろう。
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参考までに、これが元祖IBM PC/AT Type 5170に搭載されていた、Baby ATサイズのマザーボードである(Full Size ATは、これよりもさらにでかい)。1984年製造。CPUは80286-8MHz。このボードには、I/Oやビデオの類は搭載されていない。
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