王家の谷(実はレトロな産廃が詰まった筆者の倉庫)から14年振りに発掘された謎のマザーボード。メーカーはPC CHIPS社製。型番はおそらく「M915」だと思われる。実はこのマザーボード、プロトタイプ製品なのだ。だからチップセット上に「CHIP 19」だの「CHIP 20」だのといったシールが貼付されている。実際のチップセットはUMC社製。製造は1994年の夏頃。VL+ISA+PCIという、当時最も先を行っていた「何でも有り有り」のマザーボードである。
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■退廃的互換機趣味(其之一) (2008/09/15)
 【謎のマザーボード発掘の巻】

 6月以降、色々とタイヘンなことが次々に起こり、精神的に休まる暇が無かったのであるが、ようやく一息付ける程度まで回復してきたので、久しぶりに倉庫の整理を行なった。筆者は自分の倉庫を勝手に「王家の谷」と命名しているのだが、その実ただの産廃置き場で、見るヒトが見ないとゴミ溜にしか写らない。そんな中、整理を行っていたところ、見たことがあるようで忘れてしまったマザーボードが発掘されてきた。

 マザーボードには80486DX-33MHz CPUと4MBの72Pin SIMM 4枚が搭載されており、過去に使用されていた形跡がある。しかし一体いつ使ったのか、さっぱり思い出せない。なにせ今までに作ってきた互換機の数は、自分でも判らないほど多いので、キレイサッパリ忘れてしまってもむべ成るかな。

 マザーボードは1994年の30週前後の製品で、。VL+ISA+PCIという、いわば何でも有りの構成である。そう言えば「VL-BUS」って言っても、最近の若い廃人さんたちには判らないヒトも多いであろう。正式名称は「Very Long Board」でも「Very Long Bus」でも無く「VESA ローカルバス」であり、パソコン向けグラフィックス機器メーカーの業界団体「VESA」によって1992年8月に策定されたローカルバス規格である。詳細はこちらをご覧頂きたい。このボードは、当時筆者もかなり頻繁にお仕事でお付き合いしていた中国のマザーボードメーカー「PC CHIPS」社製である。但し、型番が判らない。チップセット上にもシールが貼られているところも怪しい。しばらく眺めていて、そう言えば当時PC CHIPS社の社長さんから、VL+ISA+PCIの初物マザーとして、プロトタイプのボードを頂き、評価を行ったことを思い出した。型番は「M915」であり、これにIDE I/Fを2基搭載した製品が、「M915i」だったのだ。

 さてこのボード、そのまま倉庫で永遠の眠りに付かせても良かったのだが、VLバスのスロットが付いているのを見た途端、とてつもなく懐かしくなってしまったのだよ。Windows95の発売を1年前に控えた1994年、互換機の世界の主流は80486シリーズであり、DX(33MHz)、DX2(66MHz)、そしてDX4(100MHz)が君臨していた時代だ。Windows 3.1上でいかに高速に画像を表示するかで、各ビデオメーカーがその処理速度を競っていた時であり、その苦肉の策として登場したのがVLバスだったのである。

 このバスの変態性はとてつもなく、何と言っても「80486 CPU」アーキテクチャに特化した、いわば「CPUにくくりつけの仕様」であったという所であろう。また80486のメモリバスを「そのまま」延長して引き出しているため、ノイズに弱く信頼性が低い上に相性問題も多発した。今は亡きラッセル社出版のコアなPC互換機雑誌「PC WAVE」の編集長をして、「歯の神経を引き出して脳と直接やり取りを行う」と言わしめたバスである。この記念碑的変態作、カルトとも言える変態仕様を、14年後の2008年に復活させてみるというのも、なかなか面白いのではないだろうか?と考え始めた。そうだ、このマザーボードをメインに、1994年当時のマシンの実機を再び作成し、あのDOS/Vが最も熱かった時代の記憶を呼び起こして一人悦にいる、というのもまた一興であろう。

 かくして、波多利朗のシヴァルツシルド・カフェ上にて、空前にして絶後の無意味企画「退廃的互換機趣味」がスタートすることになった。ハッキリ言って、こんな記事を読んでも時間の無駄だし、何の役にも立たない。それだけは保証しておこう。でもまあ、無意味の意味という言葉もあるしねぇ・・とりあえず今回はマザーボード発掘ということで第一回目とさせて頂きたい。

M915i発売当時のPC CHIPS社発行のカタログ。しかし我ながら良く保存していたものだなぁ。。。M915iの「i」はオンボードでIDE I/Fを2基搭載したバージョンであることを示している。M915は、このIDE I/Fが無いバージョンであったのだ。VL-BUSに加え、当時まだ珍しかった出始めのPCIも搭載し、まさに486 CPUの時代を代表する仕様となっている。なお、M915iの発売は1995年。M915は、それよりも少し前、1994年には市場に出ていたように記憶している。「UMC GREEN CPU」の文字など、知るヒトにとっては懐かしい表記であろう。
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同時に発掘されたALi社製チップセットを用いたVLバス3本構成のマザーボード。こちらには66MHzの80486-DX2が搭載されていた。メモリが30Pin SIMMであるところから、古さを感じさせる。このマザーボードの来歴については、紆余曲折があるので、またの機会にご紹介したい。製造は1994年初頭。まだPCIが出てきていなかった頃の、VLオンリーの最速ボードであった。ところで、VESAの規格では、VLバスコネクタは「FSBが25MHzの場合は3本、33MHzの場合2本、50MHzの場合は1本の使用が可能」とされていたようであるが、このボード、FSBが33MHzのくせしてバスを3本も搭載しており、ほとんど実力で動いているようなシロモノであった。
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