ATARI Portfolio(左)とDIP POCKET PC(右) ATARI PortfolioにMS-DOS互換のOSを提供していたDIP Reserch社が、自社ブランドで発売したPorftolio、DIP POCKET PC。当然のことながら、この2台は瓜二つ。しかし、よくよく見てみると、液晶が搭載されているパネルの大きさに違いがあるのが判る。DIPの方がわずかに小さい。 |
■DIP POCKET PC (2005/10/29) 久しぶりに「謎ぱ〜」の話題を取り上げる。ATARI Portfolioというマシンは、謎ぱ〜黎明期の1989年に発売された、VHSカセットサイズのパームトップ機である。1989年と言えば、Poqet Computer CorporationがPoqet PC Classicを発売した年でもあり、そういった意味で「謎ぱ〜元年」とも言える記念すべき年になっている。ところで、ATARI Portfolioであるが、MS-DOS互換OSを搭載したDOSマシンであるにもかかわらず、液晶画面解像度がIBM PC系列と異なっていたため、一般的なDOS/C化の手順が利用できなかった。そのため、日本での知名度は大変低かったという、不遇のマシンであったのだ。 (´ヘ`;)
そうはいってもこの端末、世界的に見れば大ヒットした製品であり、ヨーロッパを中心としてかなりの数が販売された。筆者も1999年に、技術評論社のモバイルプレス誌上において、ATARI Portfolioを2回に渡り特集したことがある。周辺機器にも変態的なグッズが多かった。当時、チェコスロバキアはプラハでショップを経営するJan Sedlak氏をメインに、大量のPortfolio周辺グッズを購入したものだ。例えば、本体内蔵メモリを512KBに拡張した基板とか、Portfolio専用の1MBフラッシュメモリカード、PCMCIAカード接続アダプタ、外付けのメモリ拡張ボックス、ZIPドライブ接続キット等々、枚挙にいとまがない。
さすがにここまで集めれば、もう他に無いであろうとタカをくくっていたのだが、実は甘かった!大甘だった!底知れぬPortfolioの世界には、まだ我々の預かり知れぬ亜種が存在していたのだ。それがこの「DIP POCKET PC」なのである。 そもそも、この「DIP」とは何なのか?ATARI PortfolioはCPUに80C88Aを搭載したIBM PC互換アーキテクチャを採用したマシンであり、そのOSには英国DIP Reserch社が開発(というかカスタマイズ)したMS-DOS互換のOSである「DIP Operating System」なるものが搭載されていた。DIP OSは、Portfolioの他にも、SHARPの古典的パームトップ、PC-3000にも搭載されていたことで有名(?)である。そのOSを提供していたDIP Reserch社が、自社ブランドとして発売したPortfolio、それがこのDIP POCKET PCなのだ。言ってしまえば、中身はATARI Porftolioと同じであり、ブランド名のみ変えた製品である。因みに「DIP」とは「Distributed Information Processing Ltd」の略称だ。 下表に、ATARI Porftolioのスペックを掲載しておく。DIP PCも、基本的なスペックは下記に準拠している。
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モデル名称 | ATARI Portfolio |
発売年 | 1989年 |
CPU | 80C88A |
搭載RAM容量 | 128 KB |
搭載ROM容量 | 256 KB |
ディスプレイ | 40キャラクタ×8行表示 アクティブエリア:114mm×30mm |
キーボード | QWERTY 63 キー(ボタンタイプ) |
I/Oポート | Portfolio Bus(独自仕様) →オプションでシリアル/パラレルI/F接続可能 Memory Card Slot ×1(独自仕様) |
本体重量 | 525g(単三乾電池3本含む) |
メインバッテリ | 単三乾電池3本 |
外形寸法 | 200 x 105 x 29 mm |
OS | DIP Operating System V2.11 |
DIP POCKET PCのコールドスタート画面 DIP社のクレジットが表示される。DIPとは、「Distributed Information Processing Ltd」の略称であることが判る。BIOSは1989年版。ATARI Portfolioが発売された年に当たる。 |
Portfolio(上)とDIP PC(下) ATARI Portfolioは、発売当時VHSビデオカセットサイズと評された。DIP POCKET PCも基本的にはPortfolioと同サイズである。 |
Portfolio(上)とDIP PC(下)の銘板 DIP POCKET PCの銘板に記されたシリアル番号は、手書き。アナログ感覚満点で、ナイス! |
DIP POCKET PC銘板のアップ ATARI Portfolioと同様、本体の製造国は日本である。 |
ATARI Portfolio銘板のアップ PortfolioはHPC-004という型番が記載される。シリアルはドット印刷で、いかにも量産タイプらしい。 |
ロゴマークの比較 DIP POCKET PCは、赤いラインが入っており、どことなくPoqet PC Classicを彷彿とさせる。ロゴマークを比べると、DIP POCKET PCの方が断然高級感がある。 |
いやしかし、ATARI Portfolio関連については、ほぼ漁り尽くしたと思っていたのであるが、このような超変態的端末が発売されていたとは、全く気が付かなかった。今回入手したDIP POCKET PCであるが、ブランドが珍しいというだけでは無い。ナント!専用のケースに本体、パラレルI/Fボックス、ACアダプタ、パラレルケーブル、メモリカード、マニュアル等が、ウレタン素材の緩衝材を用いてきちんと格納されているセットなのだ!この端末が、このようなセット構成で販売されていたのかは、良くわからん。ケース本体にはブランド名等の表記が全く無く、どことなく汎用品のようにも見える。このセットはe-Bayでイギリスより入手したものだが、イギリスの謎パ〜マニアが自分専用に作成したものなのかもしれない。。。 (´ー`)у-〜
DIP POCKET PC本体外観は、本家ATARI Portfolioと当然のことながら瓜二つである。但し、並べて見るとわかるのだが、DIP PCの方が、本体ケースの液晶パネル側の蓋の大きさが若干小さいのだ。ということは、成形時に使用した型が異なっているということである!う〜ん、信じられんなぁ。。。てっきりロゴとマークだけ変更した製品だとばかり思っておったのだが・・・まだまだ世の中には、不明なコトが多い。 このDIP POCKET PCであるが、製造台数は激しく少なかったものと思われる。それは、本体底面にある銘板を見ても判るのだが、シリアル番号が手書きなんだよ。。。「0533 0000 1149」と、マジックで記入されているのである。筆者宅には、ATARI Portfolioの「プロトタイプ」という、博物館モンの端末があるが、その銘板に記載されているシリアル番号も手書きだった。これを見ても判るように、このDIP POCKET PCという製品は、試作品とそう変わりない位置づけにあったようだ。あるいは、マーケットリサーチのために、ごく少数製造・販売されたものなのかも知れない。
ところで、DIP POCKET PC一式を格納したケースのドキュメントフォルダーには、純正のマニュアル類に混じって、e-mailらしきものをコピーした紙片が5枚、入っていた。これがまた謎なのだ。1992年7月28日の日付が入ったこのメールは、「Watford General Hospital」のDr. Campbellに宛てて送られたもので、送信者はプロデューサーのBernadette Bosという人物である。内容は、育児器具を紹介するTV番組についてであり、Dr.Supramanianという人の紹介でCampbell先生に番組制作の協力を依頼しているものなのだ。なぜDIP POCKET PCのフルセットに、このような全く関係無い内容のメールが、しかも5通もコピーされて入っていたのか???謎は深まるばかりである。。。 合掌!!!
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3種類のパームトップ ATARI Portfolio系の3つの機種を並べて撮影。上段がDIP POCKET PC。下段左側のテカテカと光った端末は、ATARI Portfolioのプロトタイプ。下段右側がPortfolio量産タイプ。このような光景は、滅多に見られるものでは無いと思うよ・・・ |
ATARI Portfolioプロトタイプの銘板アップ おそらく激レアであろう、ATARI Portfolioプロトタイプ銘板のアップ。シリアル番号は手書きで、0002番。2台目っちゅーことか?筐体上面にはATARIのロゴが入るものの、裏面の銘板にはどこにも記載されていない。この時はまだ、Portfolio(HPC-004)という型番は使用せず、pocket PCと称していたことが判る。 |
DIP POCKET PCセット アタッシェケースに格納された、DIP POCKET PCのフルセット。この形態で商品として発売されていたものなのか、もしくはマニアがワンオフで作ったケースなのかは不明。それにしても良くできている。ウレタン緩衝材で、耐衝撃性を向上。まるでスパイの秘密兵器だ! |
DIP POCKET PCセットのハードウエア構成 本体、パラレルI/Fボックス、ACアダプタ、パラレルケーブル、メモリカード、コイン型バッテリ(メモリカード用)が収まっている。DIP PCはパラレルI/F経由でIBM互換PCと接続を行っていた。セットには専用の接続ソフトウエアも含まれている。 |
DIP POCKET PCドキュメント類一式 ドキュメント類も全てDIPのロゴが入る。 |
DIP POCKET PCセット ケースから取り出したところ。 |
DIP POCKET PC格納ケースの外観 ケース本体は無印のプラスチック製で、汎用品のようにも思える。 |
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