ナショナル(左側)とセイコー(右側)のトランジスタ・クロック
左側がナショナル・バッテリー・クロック、右側がセイコー・ソノーラ。どちらも昭和30〜40年代の、当時「最新技術」を使用した時計であった。


■セイコー・ソノーラ (2005/09/01)

 筆者が小学生だった昭和40年代前半、実家の居間には、セイコー社のトランジスタ式柱時計が架かっていた。それまでは、1週間に1度ゼンマイを巻き上げる、純メカニカル柱時計を使用してきたのだが、「最新の技術」を搭載した、乾電池1本で1ケ月以上正確に動き続ける、驚異的性能の時計に交代したわけだ。当時使用していたトランジスタ時計は、その後クォーツ時計に取って代わられ、当然のことながら今はもう無い。しかし、先日某オークションを覗いて、以前使用していたものと「ほぼ」同じタイプの時計をハケーン、思わず買ってしまった。。。
(´ー`)у-〜

 セイコー社のトランジスタ式時計は、ソノーラ(Sonola)という商品名で発売されていた。同社のHPを見ると、セイコー社がソノーラ(打方付トランジスター掛時計)を発売したのは、昭和35年(1960年)と記載されている。トランジスタ式時計は、セイコー社の他にも何社かのメーカーがあった。その一つが松下電器で、こちらは「ナショナル・バッテリー・クロック」の名称で発売されている。これら2つの時計を並べて見ると、その構造の違いが良くわかる。

 ナショナル・バッテリー・クロックは、湾曲した磁石の棒に沿って、コイル付きの振り子が左右に振動する構造になっている。このコイルに流れる電流をトランジスタで制御することで、振り子の動力を得ているという方式だ。磁石が固定されコイルが動くという方式は、初期のトランジスタ・クロックに使用されていたようである。

 一方、セイコー・ソノーラは、左右にコイルが配置され、振り子に付いた磁石の棒が、そのコイルの中を通過する構造になっている。振り子に付けられた磁石は、向かって左側がN極、右側がS極となっている。このように、コイルが動くものと、磁石が動くものの、2通りの方式があった。

 振り子の駆動構造は異なるが、時計内部の構造はどちらも機械式だった。この方式は、純メカニカル時計からクォーツ時計に移行する間の、機械と電気とを併用した、いわば過渡期の折衷構造時計とも言えた。なお、ナショナル・バッテリー・クロックは、単一乾電池1本を使用し、セイコー・ソノーラは動作用1本、打刻(チャイム)用に1本と、合計2本の単一乾電池を使用している。

 どちらも正確な製造年は不明であるが、ナショナルの方が古そうだ。おそらく昭和30年代の後半であろう。一方、ソノーラは昭和40年代前半の製品と思われる。古くさいデザインは、いかにも昭和レトロしており、現代でも十分通用する。また、メカ的にもかなり丈夫のようで、今でも1週間に2〜3分程度と、極めて正確に時を刻んでいるから、驚いてしまうのであった・・・
(・∀・)

セイコー・ソノーラの文字盤
「TRANSISTOR CLOCK」と、誇らしげに書かれた文字が見える。この時代、トランジスタを使っていれば、ハイテク商品だったのだ・・・

セイコー・ソノーラの振り子部分
振り子の形をした磁石が、左右に配されたコイルの中を通過する仕組み。コイルの電流をトランジスタで制御することで、振動の動力を得ている。

ナショナル・バッテリー・クロックの文字盤
さすがに寄る年波には勝てず、文字盤の塗装は剥げ落ち始めている。これは初期型で、金属の上に塗料で描いているが、後期型ではプラスチック加工されたものに変更されている。向かって左下隅の剥離が激しいのは、この部分の奥に電池が格納されるような構造になっているため。おそらく液漏れした電池のガスで剥離したのであろう。

ナショナル・バッテリー・クロックの振り子部分
セイコー・ソノーラと異なり、振り子部分にコイルが付けられ、棒状の磁石部分を左右に振動する仕組みになっている。構造が正反対なのが面白い。

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