■SYNC(シンク) (2005/06/26)

 今年はこの手の複雑系解説啓蒙書籍のアタリ年か?と思ってしまう。筆者思うに、本年度複雑系書籍のベスト1はやはり、2005/03/01の項で取り上げた「複雑な世界、単純な法則」だと思うが、本書「SYNC(シンク) 自然はなぜシンクロしたがるのか?」もそれに匹敵する面白さで、やはり一気に読ませた。著者は、スモールワールド研究の第一人者であるスティーヴン・ストロガッツ。著名な数学者ということもあり、数学嫌いのヒトは引いてしまいそうだが、内容はさにあらず。数式一切無しで、実例を多様し、素人にもわかりやすく解説している。しかし、そこは数学者、前出「複雑な世界、単純な法則」の著者であるサイエンス・ライター、マーク・ブキャナンに比べると、若干内容は難しい・・・

 蛍の同期発光、洞窟内での時間隔離実験、体温周期と睡眠周期、ホイヘンスの振り子の同期現象など、取り上げている実例はどれも身近なものばかりである。こうした例から、複雑な世界を非線形科学でモデル化して、例の「スモールワールド」へと導く展開は、なかなか巧妙だ。数式は一切無いものの、本当に理解するためには、もちろんその前提となる数学的知識が必要だと思うし、また読者自身のイマジネーションも豊かである必要がある。特に、らせん波を三次元的に表現したスクロール輪、捻れスクロール輪のところなぞ、なかなか手強いでつ。。。

 本書の結びの項によれば、60年代は「サイバネティックス」、70年代は「カタストロフィー」、80年代は「カオス」、そして90年代は「複雑系」理論の時代であった。今後の流れとしては、こうした各理論を統合するようなことが起こりそうだとのことで、ここ当分はこの手の科学書にハマりそうだ。なお、専門家の間では、こういった書籍を「ブキャナン本」「ワッツ本」「ストロガッツ本」などと呼んでいるようで、なかなか面白い。知らなくても何不自由無く人生を過ごすことができるが、知っていれば豊かな気持ちを持つことができる、そういった一冊だと思う。早川書房、2,200円+税。

「SYNC(シンク) 自然はなぜシンクロしたがるのか?」表紙


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