■メカ時計は強い!中部時計修理完了 (2005/02/19)

 筆者宅の近くにS田時計店という、それは腕の良いオヤジさんがいる時計屋がある。筆者はゼンマイ式のフルメカニカル時計を多数持っているが、修理・調整は全てこのS田時計店に出している。柱時計、腕時計、置き時計、何でもござれで、かなり程度が悪く痛んでいたり、欠品があったりしても大丈夫。無い部品はワンオフで作ってしまうという、まさに職人中の職人さんだ。最近では、こういった古いモノを修理してくれるお店が少なくなってきた。そんな中で、S田時計店は貴重な存在だと言えるであろう。

 さて、今回はさすがのS田時計店のオヤジさんも、かなり苦労した一品を引き取ってきた。中部時計製造のゼンマイ式置き時計である。この時計、某所より格安にて発掘してきたものなのだが、完全な不動品であった。外観や文字盤下部に若干の腐食があっるものの、全体的な程度は良さそうに見え、またそのデザインが大変気に入ったので、修理して使おうと考えていた。ゼンマイが切れてるっぽい感じがしたが、当初大したことは無いだろうとタカをくくっていた。

 ところが、実際修理してもらってびっくり。この時計はかなり、というかほとんど再生不可能なくらいに痛んでいたのだ。修理引き取り時にオヤジさんに伺ったところ、水分の多い場所で長期間放ったらしにされていたのではないか?とのこと。本体になぜか朽ち果てて見えなくなってしまった正札が付いていたので、多分売れ残った時計として、雨漏りのする廃屋と化したショーウィンドウに放置されていたものと思われる。

 何より驚いたのは、ゼンマイだ。錆びで真っ赤になり、ブツブツに切れていたそうである。ゼンマイについては全て交換となったのだが、運が良いことに、同等品のゼンマイの予備があったとのことで、アラームのベル機構も含めて修理することができたそうだ。小さいモノだが、修理にはものすごい手間が掛かったものと思う。改めてS田時計店のオヤジさんの職人芸の凄さにカンドーした次第だ。

 このように、フルメカニカルの製品であれば、腕の良い職人さんさえいれば、どんなに壊れても復活させることができる。ライカのカメラしかり、FIAT 500しかり!しかし、電子化されブラックボックスとなってしまった現在の製品は、LSIが壊れ保守部品が無くなった時点で、その商品は永久に直すことができない。こう考えると、なんか悲しいものがあるな・・・


中部時計
筆者お気に入りの一台。文字盤下部に腐食があるが、良く見ると「MADE IN OCCUPIED JAPAN」と記載されているから、終戦直後、占領軍による統治下の時代と考えられる。中央の☆型マークが、どことなく共産圏っぽくてイイ!!!アラーム設定用針は金色。高さは約8cmと大変小振り。

中部時計裏面飾
製造後55年以上経過しているとは思えない、キレイな裏面。

台座裏側の打刻
台座の裏側には、CHUBU TOKEI KK. NAGOYA JAPANの打刻がある。金属製の台座には、まだ当時の保護用フェルトが付いた状態。

交換したゼンマイと、付いていた正札
付いていたゼンマイは錆びでボロボロにちぎれていた。比較的コンディションの良い外側に比べ、内部は激しく腐食していたものと思われる。時計には、ボロボロになった紙の正札が付いていた。何が記載されていたのかは判読できないが、どうやらこの時計は新品デッドストックで朽ち果てていたものと思われる。製造後55年以上放置されていたことを考えれば、この状態で残っていたこと自体奇跡に近い。。。

小型置き時計コレクション
ついでに筆者の小型置き時計コレクションをご紹介。特にお気に入りの5台がこれ。このうち3台は精工舎製造のもので、小さいながらデザイン的にきっちりとまとまっているので大変気に入っている。おそらく戦前のものであろう。どれもフルメカニカルで、例のS田時計店にてオーバーホールを行った。


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