■PC CHIPS社製Slot1/Socket370デュアル搭載の珍品 マザーボード、M741LMRT。1999年20週製造。ATXフォーム ファクタ。ボードの外寸は24.5×22cm。 ■ローコストパソコン用として周辺機能を取り込んだ製品で、同社はこれをマ ザーボードとは言わず、システムボードという名称で呼んでいた。64ビッ トのアクセラレータ機能付VGAはもとより、V.90ファックスモデム、 100BaseTーLAN、3D−Soundもオンボードで搭載した至れ り尽くせりの製品。 ■Slot1とSocket370は排他使用。当時はSlot1のPent ium−IIやIIIとSocket370のPPGAタイプCelero nが流通していた時であり、両方のCPUに対応した仕様となっている。 デュアルソケット搭載のマザーボードを発売したのは、おそらくPC CH IPS社が最初であろう。一捻りしたクセのある製品を多数手がけている同 社らしいマザーボードと言える。 ■モデム用のモジュラーソケットと、LANのコネクタはライザーカードで供 給される。LANコネクタはケーブルを介して専用のブラケットを接続する が、モデムはマザーボードに直接ブラケットを接続して使用する。 ■チップセットはXcel2000という捺印のあるBGAパッケージのチッ プと、AGP8Mというシールが貼付された208Pin QFPパッケー ジの2チップ構成になっている。チップセットメーカーは、同社のM741 試作ボード(Slot1のみ搭載されているバージョン)およびMercu ry Computerという会社が発売した同等スペックのマザーボード (KOB−620AT)から察すると、SIS社製と思われる。 BGAチップがSIS−620、QFPチップがSIS5595であろう。 ■本ボードの主要デバイスは下記の通り。 ・Xcel2000:チップセット(おそらくSIS−620) ・AGP8M :チップセット(おそらくSIS−5595) ・DM9102F :DAVICOM社製ネットワークコントローラ ・HT8738AM:3Dサウンドおよびファックスモデムチップ ・IT8770F :ITE社製I/O制御チップ ・W83194R :Winbond社製(機能不明) ■以下にボードのスペックを示す。
CPU | intel SEPP-Celeron、PPGA-Cerelon、Pentium-II、Pentium-III (Socket 370/Slot1 デュアル搭載。排他使用)) |
CPU Clock | 233 - 500 MHz |
FSB | 66 / 100 MHz |
Chip Set | Xcel2000(SIS-620)、SIS5595 |
Momory | 168 Pin DIMM スロット3個搭載 最高 768 MB まで拡張可能 |
Bus | PCI×1本、ISA×1本 |
Super I/O | COM1 , COM2 , LPT1 , FDD , Primary-IDE , Secondary-IDE PS/2 Mouse, USB1 , USB2 , LAN(10/100 BaseT), FAX/Modem , IrDA 64-bit VGA(2D/3D Accelerator) , 3D-Sound(PC98 Audio) |
BIOS | AMI BIOS |
写真4:チップセット#1 Xcel2000 (SIS−620チップセット) |
写真5:チップセット#2 (SIS−5595) |
■コメント Slot1のみならずSocket370をも同じボードに搭載してしまった という、PC CHIPS社のM741LMRTマザーボードです。このボー ドの前の製品(初期バージョンのM741)では、Slot1のみが搭載され ており、Socket370は搭載されていませんでした。M741の試作版 が開発されたのが1999年5月頃。その後Slot1のみ搭載されたM74 1が短期間発売され、M741LMRTにバージョンアップされたようです。 とにかくPC CHIPS社の開発スピードは驚異的で、市場にニーズがあれ ば即改良して新製品を出していました。 Slot1とSocket370のデュアルボードは、PC CHIPS社の 製品の他にも、いくつか発売されていたようです。その一つに、Mercur y Computerという会社が発売したKOB−620ATという製品が あります。これは、チップセットにSIS−620とSIS−5595を使用 した製品ですが、ボードの構成はM741LMRTとほぼ同等です。 このM741LMRTは、M741の試作版(プロトタイプ)と比較して細か い点が異なります。まず、デュアルスロットを搭載した点が異なりますが、そ れ以外にも、例えば試作版ではPC Tel社のFax/Modemチップが 搭載されていましたが、 本製品では無くなっています。これはPC Tel 社との提携により、ファックスモデム機能をPC CHIPS社のSound Proチップの中に取り込んでしまったからです。良く見ると、サウンドチッ プの捺印に電話機のマークを見ることができます。試作版のサウンドチップの 型番はHT8338でしたが、本製品ではHT8738にバージョンアップし ています。 このM741LMRTは、機能てんこ盛りボードということで、パソコンを安 く組み立てたい自作派には結構人気があったようです。このインテグレーショ ン技術は、その後ブックパソコンに引き継がれて行きます。
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