信越本線丸山変電所跡(1998年09月) |
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信越本線丸山変電所跡は、廃墟マニアの間では有名な場所であった。しかし、現在では完全に修復が施され、国の指定重要文化財として保存されており、かつての廃墟のイメージは全く無い。ここに掲載した写真は、1998年9月に碓氷峠を訪れた際に撮影したものと、修復が完了した後の2002年10月に撮影したものである。両者を比較すると、修復前はいかに荒れ果てた場所であったかがわかる。と同時に、これだけ魅力的な廃墟が無くなってしまったことに、一抹の寂寥感のようなものすら感じる。 信越本線横川〜軽井沢間は、1997 年 9 月 30 日に廃線となった。横川駅から廃線となった信越本線沿いに、軽井沢方面に向かって歩いて行くと、上信越自動車道の高架の下をくぐる。さらに進むと、進行方向右手に、レンガ作りの建物が2棟見えてくるが、ここが丸山変電所跡である。廃線となった信越本線の軌道は、現在では「アプトの道」として整備され、ハイキングコースになっている。
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丸山変電所跡は、2つのレンガ造りの建物で構成されている。ハイキングコースの名所として完全修復された現在、建物の前には、下記に示した解説が掲示されている。
国指定重要文化財 碓氷峠鉄道施設 丸山変電所は、明治四十五年に建築され、一棟が機械室で回転変流器と変圧器を収容していた。もう一棟は蓄電池室で、列車が上り勾配にかかるときに必要な電力を補うための蓄電池三百十二個が整然とならんでいた。建物の正確としては、工場建築に近いから、同じ煉瓦造り建築と言っても例えば東京駅のような華やかさはない。しかし、正面出入り口や妻面には、控えめながら装飾的な要素が加えられ、落ち着いた格調の高いものとなっており、煉瓦造り建築の最盛期の所産であることが実感され、今に伝える残り少ない遺産である。
文化庁
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修復工事が行われる前、ここは文字通り廃墟であった。しかし、ただの廃墟では無く、遺跡のような雰囲気のある、芸術的で一種異様な空間であったとも言える。それは、前出解説文にもあるように、煉瓦造りの格調高い建築物であったためであろう。丸山変電所は、廃墟であった頃、某ミュージシャンのプロモーションビデオ撮影の場所として利用され、話題になったこともある。 二棟のうち、どちらが機械室でどちらが蓄電池室だったのかは定かでは無いが、横川駅寄りの棟(一号棟)の内部は比較的構造が複雑で、おそらく変流器を備えた機械室であったと予想される。一方、碓氷峠川の棟(二号棟)の内部は平坦で造作もほとんど無く、おそらくは蓄電池が並べてあったものと思われる。 一号棟と二号棟とでは、建物の造りが若干異なっている。一号棟では屋根の上に換気のための煙突が並んでいたが、二号棟にはそれが無い。いずれの棟も、線路に面した正面に出入り口が設けられており、その上部には丸い装飾が施されている。一号棟こ の丸い装飾の内部には、安全第一を示す緑十字のマークがかすかに残されていた。 機械室として使用されていた一号棟の内部には、変電設備を設置していたと思われる構造物が見受けられる。一見巨大なシャワールームのように見える、7つに区画割りされた部分が、いったい何に使用されていたかは不明。内部はタイル張りであるが、屋根が落ちた部分の床には雑草が生い茂っており、破損も激しかった。しかし、一号棟内部の方が、二号棟内部よりも状態は良好であった。 一方、蓄電池室として使用されたと思われる二号棟は、屋根がほとんど抜け落ちているため雨ざらしになっており、傷みが激しい。二号棟内部には、目立った構造物が無い。床一面に雑草が生えているため、タイルは全く見えなかった。
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一号棟の妻面は、入り口の上に装飾が施されており、どこと無く教会を思わせる雰囲気となっている。窓ガラスには鉄線が入っているため、完全に破損して砕け散ってはおらず、部分的に欠損している状態であった。一号棟妻面手前の広場は花壇になっており、野の花がきれいに咲いていた。これが廃墟建築と妙にマッチしている。
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魅力的な廃墟であった丸山変電所跡は、その後完全に修復されて重要文化財として保存されることになった。修復が施された後は、建物の中に入ることはできなくなった。ここに掲載した3枚の写真は、2002年10月に訪れた際に撮影した丸山変電所跡である。 一見してわかるのが、一号棟の屋根に付いていた換気用の煙突がなくなっていることである。さすがにそこまでは復旧することができなかったのであろう。一号棟、二号棟共に、廃墟であったことがウソのようにきれいに修復されているのには驚いた。あれだけ荒れ果てた建築物をここまでレストアすることは、容易なことでは無かったと思われる。ここまで修復したのであるから、是非内部も公開して欲しいものであるが、これは運用上なかなか難しいことなのであろう。 あのまま朽ち果ててしまうより、こうして整備し永久保存する方が良いことはわかっているのであるが、個人的には極めて美しい廃墟が一つ無くなってしまい、残念ではある。
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