熱海サボテン公園ロープウェイの詳細


 「熱海サボテン公園ロープウェイ」の詳細について、施工を実施した「安全索道株式会社」殿にお問い合わせをしたところ、大変貴重な資料を送付して頂いた。同社の許可を頂いたので、ここにその一部をご紹介しようと思う。なお、今回の調査に当たり、無名のライターである筆者の突然の問い合わせに快く応じ、丁重に対応して頂いた同社のご厚意に対し、深く感謝したいと思います。


 1.ロープウェイの概要

 「熱海サボテン公園ロープウェイ」は、同社の沿革を示した資料によると、1967年(昭和42年)に運転を開始した。当時としては世界最大の定員を持つ120人乗り4線交走式ロープウェイで、伊豆スカイラインの玄岳と熱海サボテン公園の間の全長2,678mを結んでいた。起点停留場である熱海側の発着場は、施工時の地形断面図から判断すると、「頼朝ライン」と呼ばれている、熱海市街の山側を通る道路沿い、上ノ山付近にあったようだ。なお、サボテン公園自体は既に廃業している。マピオン上では、熱海側発着駅は下記に当たると思われる。

http://www.mapion.co.jp/c/f?grp=all&uc=1&scl=25000
&el=139%2F03%2F53.570&pnf=1&size=500%2C500&
nl=35%2F05%2F14.991

 終点停留場の玄岳駅と起点停留場の熱海サボテン公園駅との間には、3本の鉄塔が配置され、索道を支持していた。これらの鉄塔は以前は残っていたのだが、いつのまにか撤去されたようで、現在は見あたらない。以下に、国土地理院発行の地図に、熱海サボテン公園ロープウェイ操業当時の索道を示してみた。赤丸が停留場を、青丸が索道支持用鉄塔の位置を示す。

 さて、このロープウェイの架設先事業者であるが、安全索道株式会社からの情報によれば、1967年の敷設後数年で倒産してしまったそうだ。事業者についての詳細な資料は現存しておらず、不明のままである。何年間営業したのかは定かでは無いが、極めて短期間しか運転していなかったのは確かであろう。そのため、現在ではほとんど記録が残っていないものと思われる。

 熱海サボテン公園ロープウェイ架線跡【クリックで拡大表示】
 (国土地理院発行の地図による)

名称 熱海サボテン公園ロープウェイ
施工年月 1967年(昭和42年)完成
索道形式 普通索道四線交走式
定員 121人
運転速度 5 m/sec
動力 750 Kw
水平距離 2,648m
起点停留場 熱海サボテン公園(標高:295m)
終点停留場 玄岳(標高:670m)
標高差 約 375m

径 間 水平亘長 傾斜亘長
起点停留場〜No.1支柱 352.28 m 352.905 m
No.1支柱〜No.2支柱 405.72 m 407.496 m
No.2支柱〜No.3支柱 1140.00 m 1150.624 m
No.3支柱〜終点停留場 750.00 m 766.981 m
総 計 2648.00 m 2678.006 m


 2.広報用資料

 安全索道株式会社殿より、当時の広報用資料として、英文版「四線交走式索道」と、「会社沿革」の2種類のコピーを頂いた。このうち、英文版資料は、営業当時の熱海サボテン公園ロープウェイのカラー写真が掲載された貴重なものである。側面に「サボテン」と書かれたゴンドラは、赤とオレンジのツートンカラーに塗装され、いかにも温暖な観光地熱海らしいと言えよう。写真からも判るように、当時世界最大級のロープウェイというのも頷ける大きさである。この資料では、索道のロケーションとして「上ノ山植物公園−玄岳高原」の記載が見られる。またロープウェイの名称も「熱海高原ロープウェイ(Atami Highland Ropeway)」となっている。「サボテン(Cactus)」という名称のキャビンには、121人乗車できるとの記載もある。

 会社沿革の資料には、1967年(昭和42年)の項目に、わずか2行ではあるがロープウェイ建設に関する記述がある。また、英文版資料と同じ写真が掲載されている。

英文版広報資料 Page1
英文版広報資料 Page2

 会社沿革【クリックで拡大表示】
 (安全索道株式会社提供)


 3.詳細資料

 以下に、「ゴンドラの設計図」、「終点停留場(玄岳)の構造図」、「起点停留場(熱海サボテン公園)の構造図」及び「索道敷設断面図」を掲載した。

 ゴンドラ設計図を見ると、ゴンドラ本体(客室)の全長は8.4m、全高は2.55m、全幅は2.85mとなっている。懸架部からゴンドラ底部までの全体の高さは、実に7.40mにも達する巨大なものだ。懸架部の索道に接する水平部分には16輪×2列の滑車が設置されている。この水平部分の長さは、8.47mもある。

 終点停留場である玄岳駅は、建物中央部分のシャフトの底に、索道用の巨大なプーリーが格納されている。建物上部の帽子のような部分にも巨大な滑車が格納されている。建物は地上2階、地下2階の構造となっており、地下部分はおそらく設備が納められていたものと思われる。終点停留場には原動機(モーター)は設置されていない。

 図面より判断すると、起点停留場である熱海サボテン公園駅も円筒形の建築物であったようだ。こちらには運転室とモータが設置されている。建物自体を確認していないので、どのような構造になっていたのかは明らかでは無いが、どうやら3階建ての円筒形のビルであったようだ。地階には原動機(モータ)が設置されており、発着場は3階部分に位置していた。

 索道敷設断面図には、起点停留場から終点停留場までの索道敷設場所の勾配が記載されている。3本あった支持鉄柱のうち2本は、起点停留場の付近に設置されていた。勾配は敷設区間のうちの半分程度は比較的なだらかで、残りの半分がかなりの傾斜を持っている。図面より計算した起点と終点の標高差は、約375mとなっていた。

項 目 搬器主要諸元
搬器長さ 8,400mm
搬器幅 2,860mm
搬器高さ 2,930mm
室内高さ 2,250mm
床面積 2.015u
最大乗員数 121名
自重 6,840kg
照明装置
前尾灯 各2個、室内灯 4個
マーカーランプ 4個

 搬器(ゴンドラ)図面 .
 (安全索道株式会社提供)

 終点停留場(玄岳駅)構造図 .
 (安全索道株式会社提供)

 起点停留場(熱海サボテン公園駅)構造図 .
 (安全索道株式会社提供)

 索道敷設断面図 .
 (安全索道株式会社提供)



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