リストマーク 西武鉄道安比奈線(2004年01月)

西武鉄道安比奈休止線


 西武鉄道安比奈(あいな)線は、各種廃墟系雑誌に掲載された有名なスポットである。特に、雑木林の中を通る線路の写真は、たいへん画になる構図なので、様々なところで紹介されている。場所は西武新宿線の南大塚駅。南大塚駅は本川越から1つ目であり、廃墟系スポットの中でもアクセスに便利な場所と言える。

 ところで、この西武鉄道安比奈線は、一見廃線のように見えるが実は「休止線」なのだそうだ。筆者はいわゆる「鉄っちゃん」では無いので詳しいことは控えるが、この路線は大正14年(1925年)に、入間川での川砂利採取を目的として西武鉄道が敷設した貨物線だったそうだ。WEB上での記載を見ると、休止線になった時期は昭和42年(1967年)との記述が多い。なぜ休止線扱いにしたのかは不明であるが、おそらくこの路線を復活させる計画が、当時あったのだろう。

 安比奈線は南大塚駅を出た後、国道16号線と交差し、入間川に向かって一直線に進んでおり、河川敷手前で大きく左にカーブした後、終わっている。全長は2km強といったところであろうか?南大塚駅付近は、住宅地の中を行く市電といった感じであるが、その後すぐに田園地帯を走るローカル線といった雰囲気になる。そして終着の安比奈駅跡は空前の荒れようで、不法投棄と廃材が散らばる世界であった。休止線ということもあり、木製の支柱と架線は全体の7割近くに渡って残っている。中には、倒壊防止用のコンクリートの柱を添えた支柱や、一端切れた架線をボルトでつなぎ直している箇所等、メンテナンスの跡も見受けられる。ただし、入間川近くの部分には架線は全く残っていなかった。

 南大塚駅から安比奈駅跡まで、片道徒歩約1時間のウォーキングとなる。日頃運動不足のサラリーマンにとっては、週末の良い散歩になるだろう。一般的な廃墟、廃線と異なり、訪問者が多いのか見学通路がきちんと判るのが良い。途中にかかる2つの大きな鉄橋は、枕木が完全に朽ちているので非常に危険であるが、それも迂回路が設けられているため問題は無い。ただ、安比奈駅付近は荒れ放題で治安の問題もあり、あまり近づかないほうが無難と思われる。

Google Maps上での位置は、下記の通り。
西武鉄道安比奈線

地図.西武鉄道安比奈休止線の概略経路
国土地理院の地図上に休止線の経路を示してみた。詳細な調査を行っていないので、あくまで概略の位置であることをお断りしておく。


写真1.南大塚駅構内の安比奈線跡 #1
南大塚駅の北側に安比奈線の跡が残っている。この部分を見る限り、きちんと整備された線路であるかのような印象を受ける。


写真2.南大塚駅構内の安比奈線跡 #2
安比奈線跡は、南大塚駅構内でご覧のようにすぐに途切れてしまう。


写真3駅北側部分
南大塚駅から北側へ200mほど行ったところ。2本の路線が確認できるが、両方とも線路が途切れている。向かって左側の架線があるほうが本線。駅に近い部分であるため、かつてはこの部分は複線になっていた可能性もある。


写真4.国道16号近傍の路線
国道16号付近の線路は、比較的保存状態が良い。架線、枕木もしっかりと残っている。


写真5.信号灯の跡
南大塚駅周辺部分では、このように鉄道設備も所々に残っている。


写真6.架線部分のアップ
架線は木製の柱でできている。この付近の架線は、ほぼ完全な形で残っていた。


写真7.国道16号付近の踏切跡(?)
かつて踏切があった部分に踏切の土台が残されていた。信号ボックス2個も道路沿いに残っている。国道16号を渡ったところにも、同様の土台が残る。


写真8.国道16号との交差部分
線路は半ばアスファルトに埋没しており、ご覧の通り。かつての線路上を車がビュンビュンと走る。


写真9.国道16号を越えた部分
路地裏を通る市電といった感じの部分。ここも架線、枕木が残り、比較的良く保存されている。


写真10.雑草に覆われた線路
暫くすると、線路は完全に雑草に覆われ見えなくなってしまう。架線は残っているが、木製の支柱が朽ちてしまい、このように倒壊防止の支柱が設置されている部分もある。そうまでして架線を残したいのだろうか?休止線ということで、おそらく完全に撤去できないのであろう。


写真11.住宅地を抜けた部分
住宅地を抜けると、線路は畑の中を一直線に入間川へ向かって進んでいる。途中、半ば泥の中に埋没している部分もある。


写真12.住宅の裏を通る
住宅の軒先を線路が走る。住民の中には線路上に家庭菜園を設けているところもあった。のどかな風景が続く。


写真13.鉄橋 #1
宅地を抜けると開けた畑に出る。この鉄橋は畑の中の水路を跨ぐ大きなもの。鉄の橋梁部分はまだしっかりとしているが、枕木は完全に腐っており、極めて危険。とても上を渡れる代物では無い。


写真14.鉄橋 #1 上部
鉄橋を上から見たところ。このように枕木は腐っており、ところどころ無くなっている。線路は吹きっさらしの田園の中を、一直線に入間川方向へ向かって走っている。


写真15.畑の中を進む線路
心和む風景。のどかな田園風景が続く。このあたりがちょうど安比奈線の中間部分であろうか。


写真16.アスファルト道路との交差点
アスファルト道路との交差部は、このように線路が埋没している。この道路は、休止後に敷設されたものと思われる。


写真17.新設された道路との交差点
この道路も、休止後に敷設されたもの。線路などおかまいなくアスファルトで固めている。中央はるか先に見える雑木林が、写真集等で有名な撮影ポイント。


写真18.小型の鉄橋
農地の用水路との交差部。小さい鉄橋になっているが、ご覧のように荒れ放題。


写真19.雑木林の中の線路
廃墟系写真集で有名なスポット。雑木林の中を行く鉄道。地面の落ち葉が実に良い雰囲気を出している。撮影するのなら、是非紅葉の時期を狙いたい場所である。うっそうとした木々に囲まれてはいるものの、鉄道、架線共に保存状態は良い。安比奈線探索の一番の見所であろう。


写真20.落ち葉の中の線路
どことなく詩的な風景。


写真21.鉄橋 #2
少し太い通りを越えた部分にある鉄橋。最初の鉄橋よりもちょっと小振りのものだ。この鉄橋も枕木が全て腐っており、非常に危険。上は通れない。そこは良くしたもので、ちゃんと下に小川を渡るための別の橋ができている。ギャラリーが多い証拠だ。この鉄橋の手前にあるかなり大きな道路は、休止後に敷設されたものらしく、線路は完全に撤去途されていた。


写真22.鉄橋 #2 上部
見ての通りガタガタの状態。とても危なくて渡れない。鉄橋の向こう側で、線路は左に湾曲している。


写真23.鉄橋 #2 上部
鉄橋の向こう側の道路は、新設された太い通り。ここで鉄路は完全に途切れてしまっている。道路工事の際、レールを取り外してしまったようだ。この部分から、架線が無くなり、支柱だけが残る。


写真24.鉄橋を渡った後の風景
草むらの中を湾曲しながら通る線路。この写真は進行方向と逆側、南大塚方面を向いて撮影したショット。安比奈駅方面は背後となる。


写真25.八瀬大橋との交差部
入間川を渡る八瀬大橋で、また線路は途切れている。たとえ営業を再開するにしても、この部分はかなりの工事が必要になるだろう。


写真26.八瀬大橋通過後
再び何事も無かったかのように線路は続く。向こう側には入間川を渡るパイプラインの橋が見える。安比奈駅はパイプラインの向こう側になる。右手には入間川がすぐそこに流れている。架線は無く支柱のみ空しく残る。


写真27.蔦がからまった支柱
木造ではあるものの、意外と保存状態は良い。


写真28.意味不明の設備
線路脇には、手押しポンプのような形をした設備が残されていた。転轍機の後か何かであろう。


写真29.終点付近の風景
終点の安比奈駅付近。砂利運搬用のトラックが行き来する道路を渡ったところ。この辺りから、不法投棄が目につくようになってくる。だんだんと荒れ果てた状態になる。


写真30.安比奈駅跡
雑草と土砂に埋もれた安比奈駅の跡。かつてここに駅が存在したのかどうかも疑わしいくらい、荒れ果てている。この付近は四駆のコースにもなっているようで、そこかしこに轍が残っている。冷蔵庫やテレビ等の不法投棄も山のようにある。環境極めて悪し!


写真31.安比奈駅跡
わずかに残っているレール。余りにも堆積物がひどいので、この部分くらいしかレールを確認することができなかった。この他にも、コンクリート製の土台が2つ確認された。しかし、なぜここまで徹底的に荒れ果ててしまったのであろうか?


番外編:途中で見つけた廃車
おそらくは第6代目のスカイラインと思われる廃車。今回の探索の途中でたまたま発見したもの。しかし、今まで多くの廃車を撮影してきたが、ここまで徹底的にブチのめされた廃車というのも珍しい。フロントグリル周りが残っていたので、なんとか車種が判明できたが、そうでなければ全くわからなかったところだ。




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