40代の人であれば、このラジオを見て懐かしいと思うはずだ。少年漫画誌の 裏表紙あたりに、カラーで広告が出ていたのを覚えている人も多いのではないか と思われる。(有)共和製作所が発売したIC搭載の超小型ラジオ、HOMER IC−3000である。HOMERというブランドのラジオは数種類存在したよ うだ。このIC−3000は、外寸が43×30×17.5mmと非常に小さく 重さも31gしか無い。おそらく昭和40年代後半の製品と思われるが、当時と しては画期的な小ささだったと思われる。その自信の表れとして、この製品の取 り扱い説明書の冒頭部分を転載してみよう。 −−−−−−−−−−−−−−− ホーマーラジオをお買い上げ下さいまして誠にありがとうございます。 近年の電子工学のめざましい進歩にともなって、電子機器の小型・高性 能化は止まるところを知らず、しかも大量生産による低価格をめざして 常に前進しています。ホーマーラジオシリーズは不断の研究によりその 極限を実現するよう閑静されたもので、どなたからも真に<価値ある製 品>とご満足いただけるものと確信しています。 −−−−−−−−−−−−−−− と、こんな感じだ。 電源はボタン電池を2個直列に使用する。型番はA−76もしくはG−13を 使う。スピーカーは付いておらず、付属のイヤホンで音を聞く。電源スイッチは イヤホン接続と連動しているので、付いていない。取り扱い説明書には、このイ ヤホンについても触れられており、「IC−3000用イヤホーンは、ホーマー が特に設計した最高級のイヤホーンですから、別にお求めの場合はホーマーIC 用イヤホーンと御指定下さい。」とまで書かれている。1日3〜5時間使用して 1ケ月は電池が持つという省電力設計にもなっている。 ラジオ内部はポリバリコンとロッドアンテナ、それにICモジュール部で構成 されており、複雑な部品は無い。ポリバリコンはKYOWA製であった。筆者が 子供の頃は、このラジオを「スパイラジオ」等と呼んでいた。結構高価だったの で買うことはできなかったが、たいへん印象に残っている製品である。