カシオ計算機株式会社が昭和62年8月頃に発売した超小型ワープロ、ハンディ
ライター(HW-7)である。それなりのマニアの方には比較的有名な製品。五十音
順に並んだキーボードと16×16ドットの8文字表示のLCD、5万語の辞書内蔵のワ
ープロソフトと24ドット熱転写プリンターを一体化させた装置である。プリンタ
ーの印字送り機能を人の手で行なうという点が、当時としては(今でもそうだが
)目新しい構造だった。結局、売れたのか売れなかったのかは判然としないが、
今でも時々秋葉原のジャンクショップにさりげなく置かれていたりする。因みに
筆者は、発売当時物珍しさも手伝ってさっそく購入し、FDのラベルやビデオのタ
イトル印刷に使用したものの、そのうち面倒くさくなってしまい、結局そのまま
お蔵入りした。
この製品の最大のウリは、ラベル等の通常プリンタでは位置指定が極めて難し
い紙に容易に印刷する機能であるが、実際使ってみると慣れるまでは意外に苦労
する。製品には位置決めに使う定規が付属しており、まず印刷したい場所にこれ
を設置する。次に印刷文章を入力したHW-7を垂直に持ち、印刷モードにして定規
に合わせて置いたあと、本体横にある印刷ボタンを押しながら右側へスーっと移
動させて印字を行なう。
印字部分にはゴムローラの回転に合わせてインクリボンが送られるようになっ
ている。24ドットのサーマルヘッドはむき出しの状態で、その上にインクリボン
が覆いかぶさる構造だ。本体を垂直に固定し、一定速度で右に移動させるという
動作は、案外難しく疲れる。付属定規はあるものの、細かい位置を決めるには経
験が必要となる。本体がもう少し軽くて小さければ、使いやすくなったのであろ
うが、当時の集積化技術ではこれが限界であろう。電源であるが、充電式Ni-Cd
バッテリーを本体内部に搭載しており、満受電で8時間使用できた。
本体上部には専用仕様のカードスロットが1基設けられており、RAMカード
(5,500円)や毛筆ROMカード(9,800円)をオプションとして用いることが可能
だった。このあたりは、拡張性も含め良くできていると言えよう。カルトな商品
と言えるかもしれない。